2009-01-01から1年間の記事一覧

ハートモニター

医者になって数年目の頃、患者さんの臨終に際して感じた違和感を今でも思い出します。 癌患者さんを担当し、当初は病気が良くなることを目指して患者さんと治療をしていましたが、ある時を境に治療は症状の緩和へと方向転換することになりました。家族も根気…

発症時に皮膚粘膜病変を伴うベーチェット男性患者の予後

Prognosis of Behcet's syndrome among men with mucocutaneous involvement at disease onset:long-term outcome of patients enrolled in a controlled trialRheumatology 2010;49:173-177. Vedat Hamuryudan, Gulen Hatemi, Koray Tascilar, et al.目的:…

HLA B51/B5とベーチェット病発症リスク:患者対照遺伝子関連性研究

Arthritis & Rheumatism 61(10),2009,1287-1296. MATHLIDE DE MENTHON, MICHAEL P LaVALLEY, CARLA MALDINI, et al. 目的:HLA B5またはB51対立遺伝子のベーチェット病発症への遺伝学的な影響をメタアナリシスによる定量化と潜在的な修飾因子を探すこと。 方…

秋さんへ

年も押し詰まり、休みに入るまで慌ただしい日々を過ごしています。私は19日、20日と癌治療認定医のセミナーと試験を受けに行ってきました。朝9時から夜7時までセミナーがあり、その翌日は午前セミナーがあり、午後に試験がありました。受験者は30歳…

産科病棟

勤務する病院の産科病棟に約15年ぶりに寄ってきました。 自分の子供が生まれた時に訪れて以来です。長男の出産時には、救急・麻酔科研修で300例程度の全身麻酔をかけて自信をつけていた私は、「痛みだったら止めてあげるから無痛分娩にする?」などという不用…

インフリキシマブにアレルギーを示す重症ベーチェット病ぶどう膜炎患者におけるアダリムマブへの変更の成功例

Rheumatol Int. 2009 Oct 9. [Epub ahead of print]Successful switching to adalimumab in an infliximab-allergic patient with severe Behcet disease-related uveitis.インフリキシマブはベーチェット病患者のぶどう膜炎のコントロールに著しい効果を示…

医師確保

2年間の初期研修を3月に終える予定の研修医が専門研修のため見学に来てくれました。 朝9時に待ち合わせをして、午前院内を案内し、昼食を一緒に済ませ、午後の検査・処置を見学してもらいました。夜医局の若手の意見も聞いてもらおうと一緒に食事に行き、今…

Single nucleotide polymorphism: SNP(スニップ)2

1.NOD2 主に欧米での検討でクローン病で疾患感受性と関連があるとされるNOD2の一塩基多型は、ベーチェット病では頻度が低く、むしろ白色人種では防御的に働く可能性がある。Rheumatology 2009 48(11):1375-1377 Low prevalence of NOD2 SNPs in Behcet's d…

Single nucleotide polymorphism: SNP(スニップ)

ヒトゲノムを対象とした一塩基多型の研究が盛んに行われています。つい最近も、慢性C型肝炎のインターフェロン治療の効果が悪い集団では、その人の持つインターフェロン ラムダ(IL28B)のSNPに変化があることが相次いで報告され、新聞にも大きく掲載されまし…

家族

子供が、「お父さん、僕はいつか家族の誰かが亡くなったら1日だけは悲しむけどその後は気持ちを切り替えようと思う」と言う。ちょっと唐突だったけれど、年老いた祖父母のことや私が病気であることも知っているので、彼なりにいろいろなことを感じて、そして考…

難治性腸管ベーチェット病に対する抗TNF抗体インフリキシマブの効果

Rheumatology 2009;48:1012-1013 Letters to the Editor要旨腸型ベーチェット病は消化管出血や穿孔などの重篤な合併症により、予後不良となりうる。高用量の副腎皮ステロイドや免疫抑制剤は治療として広く用いられているが、難治性の腸型ベーチェットの治療…

新型インフルエンザワクチン接種

新型インフルエンザワクチンをうってきました。 インフルエンザ診療に携わる医療関係者が優先され、19日から接種が始まりました。外来診療での自身の感染や抵抗力の下がった入院患者さんへの感染源にならないようにという意味があります。 不活化ワクチンで…

学会参加2 京都大学山中伸弥教授講演

先日ノーベル賞の登竜門といわれるラスカー賞を受賞され、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を世界で初めて作成したことで知られる京都大学iPS細胞研究センター長の山中伸弥教授から、不老不死、万能細胞であるiPS細胞の誕生から現在に至るまでの研究の概要…

学会参加

京都で開催されている学会に参加しています。年に一度の大きな学会で、1万5千人もの医師の参加が予想されています。 クローン病などでのレミケードの使用成績は多数報告され、目新しくはなくなっています。腸型ベーチェットについては、イムラン(アザチオプ…

新型インフルエンザワクチン

新型インフルエンザが流行していますが、日本でも10月19日からワクチンの接種が医療従事者と妊婦から始まり、順次拡大されます。 当面、限りあるワクチンを有効に使うために優先的に接種する対象者としては、以下の人が挙げられています。1)インフルエンザ患…

9月に寄せて

不順な夏が過ぎ、明け方寒い日が続いています。入院・退院から1年が経過しました。トラウマとなった大変だった日々が思い出されますが、何とか大きな痛手にはならず今日に至っています。本日は、朝病院に行き、担当患者さんに変わりがないことを確認した後、…

ベーチェット病:経口避妊薬治療後の症状の緩解

Behcet’s disease: remission of patient symptoms after oral contraceptive therapy Clinical and Experimental Dermatology, 34, e88-e90,2009 S. H. Oh, J. Y. Kwon,* J. H. Lee, E. C. Han and D. Bang Department of Dermatology and Cutaneous Biolog…

ベーチェット病と関節リウマチにおける疾患の活動性と「うつ」の関連

Rheumatol Int. 2009 Aug 6. Melikoglu MA, Melikoglu M. Department of Rheumatology, Physical Medicine and Rehabilitation, School of Medicine, Akdeniz University, Antalya, Turkey目的:関節リウマチやベーチェット病患者において、疾患の活動性はう…

あなたとベーチェット病―役立つインターネット情報

ベーチェット病とは、どんな病気?体の血管に炎症が起きる、血管炎といわれる状態がこの病気の姿とされています。炎症の起きた部位によってさまざまな症状となって現れます。皮膚、口や鼻、腸などの粘膜、脳や神経、下肢や胸部、頭部などの血管に病変が見ら…

ひと時の別れ―生き続ける想い

以前、このブログでもとりあげた患者さんが緩和医療の専門病床に移られて、ほどなく永眠されたとの連絡を担当医から受けていました。しばらくして、奥様から丁重なお手紙をいただきました。 http://d.hatena.ne.jp/sakurasasuke/20090614#1244982292「・・・…

久しぶりの日曜休日

8月を迎えました。昨年の今頃は最悪の体調で、あまり好ましくない感覚とともに、入院に至った一連の記憶が思い出されます。 私の住む地域では、1日の気温の変化は激しく、車のハンドルが握れないほど気温が上がったかと思えば、明け方は肌寒い日が続いてい…

医者と患者の理解に必要なこと

先日、病院主催の医療安全に関する講習会があり、参加しました。 弁護士でもあり、大学教授でもある講師から、医療訴訟の現状についての解説があり、300名近く入る講堂が埋まるほどの参加者でした。日頃は患者側の弁護人として活動されているとのことで、さ…

はじめてベーチェット病と言われたあなたへ

初めてベーチェット病と言われて、不安な思いの中で、このページにたどり着かれた方に、少しでも理解を助け、適切な治療へとつなげていただくために、これからも少しずつ書き加えていきたいと思います。私はベーチェット病や膠原病の専門家ではありませんが…

レミケードの特殊型ベーチェットへの適応外使用

インフリキシマブ(商品名レミケード)は現状では眼病変以外には保険適応がありませんし、適応拡大の目処もたっていません。リウマチでは既に広く使われており、近々、使用中の有効性の減弱に対して、より多くの量まで使用できるように改正される予定です。…

ベーチェット病による大動脈弁閉鎖不全症に対する外科治療の長期経験

Dong Seop Jeong, MD, PhD, Kyung-Hwan Kim, MD, PhD, Jun Sung Kim, MD, and Hyun Ahn, MD, PhD Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Seoul National University Borame Medical Center, and Department of Thoracic and Cardiovascular Su…

ひと時のお別れ

担当していたがん患者さんとひと時のお別れをしました。 以前にもとりあげたことのある患者さんが体調を崩され、入院していただきました。初めてお会いした時から約2年近く入院、外来で診察させていただきました。最初の入院時に、がんであること、手術がで…

インフリキシマブ治療終了後重症ベーチェット病の緩解の持続

ベーチェット病の早期にインフリキシマブ(レミケード)を用いて治療することの有効性を指摘する報告で、2009年Rheumatologyという国際誌に編集者への手紙として掲載された論文です。IGNAZIO OLIVIERI et al. J Rheumatol 2009;36:4(以下、本文) 2008年5月…

緩和ケア講習会

5月30日(土)、31日(日)と上記講習会に参加してきました。 体調からはできれば休んでいたい土曜・日曜ですが、自分が自分であるために頑張らなければいけないときもあります。1日目は午後1時30分から午後9時まで、2日目は朝9時から午後6時までのタイトなス…

学会参加

先週、中部地方で開かれた学会に参加してきました。 私の専門とする領域では、ベーチェット病が取り上げられるのは全体のごく一部ですが、必ず目は通すようにしています。 ベーチェット病に限らず、最近の学会における最先端分野と言えるのは分子生物学を応…

ベーチェット病とマトリックスメタロプロテアーゼ

ドキシサイクリンによる腹部動脈瘤の治療:好中球由来成分の減少を介した蛋白分解バランスの改善 J Vasc Surg. 2009 Mar;49(3):741-9. Abdul-Hussien H, Hanemaaijer R, Verheijen JH, van Bockel JH, Geelkerken RH, Lindeman JH. Department of Vascular S…