発症時に皮膚粘膜病変を伴うベーチェット男性患者の予後

Prognosis of Behcet's syndrome among men with mucocutaneous involvement at disease onset:long-term outcome of patients enrolled in a controlled trial

Rheumatology 2010;49:173-177. Vedat Hamuryudan, Gulen Hatemi, Koray Tascilar, et al.

目的:ベーチェット症候群を有する男性患者において、発症早期に主要臓器病変を伴わないことの影響の検討
方法:平均11.7年前にサリドマイドを用いた治療の比較試験に登録された際に、活動性の皮膚粘膜病変しか有さなかった96名のベーチェット病患者について、試験終了後、主要臓器病変の合併の指標として免疫抑制剤の使用について、再評価をおこなった。
結果:転帰の情報は91名(95%)の患者で得られた。39名(43%)の患者が試験後免疫抑制剤の服用が必要であった。免疫抑制剤の使用は、若年で発症した例(76%,≦24歳)が、非若年発症(30%,≧25歳)に比べ頻度が高かった。若年での発症(OR 6.3;95%CI 2.09-19.04)と試験終了後のコルヒチンの不使用(OR 3.860;95%CI 1.484-10.034)が免疫抑制剤使用の危険因子であった。しかし、コルヒチンを服用していた患者の82%は非若年発症の患者であった。サブグループ解析において、コルヒチンは発症時により高年齢であった群においてのみ、免疫抑制剤の使用を減少させる有意な効果が認められた(フィッシャーの直接確立検定5.026, P=0.031)。眼病変(18名),血管病変(14名)は免疫抑制剤の使用の適応として最も高頻度であった。
結論:若年時にベーチェット病を発症した男性においては、発症早期に主要臓器病変がないことが病気の緩徐な進行を意味しない。非若年で発症したベーチェット症候群の男性例にあってはコルヒチンの使用が、免疫抑制剤の使用の必要性を減らすのかどうかは正式な研究を待つ必要がある。

注:イスタンブール大学のYazici教授らのグループからの報告です。2009年3月に投稿され、9月に受理された論文ですが、2010年1月号として、オンラインで読むことができます。
11年前にサリドマイドの有効性を検討した比較試験の対象となった患者の予後を再調査したもの。サリドマイド治療の後、統一された治療や観察は設定されず、カルテの確認あるいは電話による調査も多く含まれることから、データにはバラツキが多いことが推定されます。特にコルヒチンの使用については、明確な開始・併用基準や投与期間の記載はなく、コルヒチンが合併症を防ぎ、免疫抑制剤の使用を減らすことができるかを評価することは困難で、長い病歴の一断面(再調査時点)を評価しているに過ぎなません。コルヒチンの使用が免疫抑制剤の使用の頻度を減らしているのか、免疫抑制剤の使用によりコルヒチンは不要となっているのか、こうした横断研究のスタイルからは頻度の違いとしてしか評価は難しいように考えます。この辺が、結論の最後の説明につながる弱さでもあります。

この報告で大切なことは、若年で発症した男性はより慎重に治療する必要があること、だけかもしれません。

にほんブログ村 病気ブログ ベーチェット病へ
にほんブログ村