Single nucleotide polymorphism: SNP(スニップ)

ヒトゲノムを対象とした一塩基多型の研究が盛んに行われています。つい最近も、慢性C型肝炎インターフェロン治療の効果が悪い集団では、その人の持つインターフェロン ラムダ(IL28B)のSNPに変化があることが相次いで報告され、新聞にも大きく掲載されました。SNPというのは、父方、母方から由来する2本1組の対立遺伝子があり、それぞれ30億の塩基が対となっているのですが、対となる塩基が異なっている部位があり、多くは一つの塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)が異なっているため、この違いのパターンを一塩基多型と呼ばれています。

このパターンの違いが、特定の病気のなりやすさ、重症化のしやすさ、薬の効きやすさなどと関連することが知られてきました。逆に、究極の個人情報ともいわれ、将来的な病気のなりやすさ、予後などさまざまなことが分かってしまう可能性も秘めているわけです。

ベーチェット病においてもSNPの研究も行われてはいますが、以前の検査法は端的に言っていい加減な部分もあって、信頼のおける研究は少なかったのですが、最近では一度に90万塩基を判定できるチップも開発され、検査法も格段に進歩し、信頼できるものとなってきました。確実に病気のある人、確実にない人がある程度集まれば、かなり信頼性の高いSNPの評価が可能で、ヒトのゲノムの中のどのような部位に、どういう変化が起こるとその病気になりやすいのかが分かるようになってきています。問題の多型を有する遺伝子領域が、これまでに明らかにされているヒトゲノムの解析データと対比し、その働きが特定できれば、それを補うことで治療法の開発に結びつくことも期待されています。

結果の解釈で注意が要るのは、研究の手法によって信頼度に差があること。こうした研究は、直ぐには自分の治療には結びつかないかもしれませんが、治験、研究の成果は、未来への贈り物という考えもあります。ほとんどの病気は軽重によらず、何らかの自身の遺伝子の特性に関係しているという考えもある一方で、現状の特定疾患という枠で捕らえると、いろいろな意味で遺伝子を調べることには抵抗があるとする考えもあるかもしれません。


これまでのベーチェット病でのSNPの研究の一部には以下のものがあります。

1. Cytotoxic T lymphocyte antigen 4 (CTLA-4)
T細胞の過剰な反応を抑える働きを担うCTLA-4は、いくつかの膠原病などで関与が指摘されていますが、ベーチェットについては、以下の論文では否定的。

1)Br J Ophthalmol 2009;93:1378-1381
No association of CTLA-4 polymorphisms with susceptibility to Behcet disease
L Du1, P Yang1, S Hou1, H Zhou2, A Kijlstra3,4
The First Affiliated Hospital, Chongqing Medical University, Chongqing Key Laboratory of Ophthalmology, Chongqing Eye Institute, Chongqing, PR China, Zhongshan Ophthalmic Center, Zhongshan, PR China, Eye Research Institute Maastricht, Department of Ophthalmology, University Hospital Maastricht, Maastricht, The Netherlands, Animal Sciences Group, Wageningen UR, The Netherland.

2.IL-6,IL-8 receptor, TNFα 多型
トルコ人とドイツ人を対象とした研究では、IL-6,IL-8 receptor, TNFα 多型はベーチェット病に関連しない。

1)Clin Exp Rheumatol. 2008 Jul-Aug;26(4 Suppl 50):S103-6.
IL-6 receptor, IL-8 receptor and TNF-alpha238 (G/A) polymorphisms are not associated with Behcet's disease in patients of German or Turkish origin.
Storz K, Loffler J, Koch S, Vonthein R, Zouboulis CC, Fresko I, Yazici H, Kotter I. Department of Internal Medicine II, University Hospital, Ottfried-Muller-Strasse 10, Tubingen, Germany.

3.IL-17
韓国患者さんを対象とした検討では、IL-17の多型とベーチェット病の疾患感受性とは関連する。

1)Rheumatol Int. 2008 Dec;29(2):173-8.
Interleukin-17F gene polymorphisms in Korean patients with Behcet's disease.
Jang WC, Nam YH, Ahn YC, Lee SH, Park SH, Choe JY, Lee SS, Kim SK. Department of Chemistry, School of Advanced Science, Dankook University, Cheonan, South Korea.


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