難治性腸管ベーチェット病に対する抗TNF抗体インフリキシマブの効果

Rheumatology 2009;48:1012-1013
Letters to the Editor

要旨

腸型ベーチェット病は消化管出血や穿孔などの重篤な合併症により、予後不良となりうる。高用量の副腎皮ステロイド免疫抑制剤は治療として広く用いられているが、難治性の腸型ベーチェットの治療は困難で、有効な治療は分かっていない。このため、より良い結果が約束される新しい治療の知見が強く求められている。
本研究では以前に国際研究グループによって推奨された診断基準に基づきベーチェット病と診断された10名を対象にした。すべての患者は口内炎を認め、陰部潰瘍、特徴的な眼病変、皮膚病変、皮膚反応陽性のうちいずれか2つを伴っていた。
既存の免疫抑制治療により8週間以上活動性の腸潰瘍を有するか、ステロイド治療が相対的に禁忌となるか、重度の緑内障や脊椎の多発圧迫骨折を伴う骨粗鬆症などステロイド治療に耐えられない患者がこの研究に登録された。
インフリキシマブは3 mg/体重kgを、0、2、6週に投与し、以後、8週ごとに繰り返した。インフリキシマブの効果が減弱した場合には、投与量を増やすか、投与間隔を8週から6週へと短縮した。原則として、この治療中はステロイドを2-4週ごとに10%ずつ減量した。これまでの治療法が無効であったか、導入できなかった腸型ベーチェット病患者におけるインフリキシマブの短期的(投与後2週、4週)、長期的(投与後6カ月、12か月)な効果と安全性を評価した。
すべての患者は、急速かつ劇的な臨床的、あるいは腸病変の改善を認めた。口腔および陰部潰瘍、ぶどう膜炎、皮膚病変および関節痛は4週以内に改善し、CRPや血沈などの炎症マーカーの減少と関連していた。驚くべきことに、腹部CTで評価した7名の患者のすべてがインフリキシマブ導入のわずか2週間後に回盲部の壁肥厚や腹水、結腸周囲脂肪組織の透過性、リンパ節腫脹の改善が確認された。
腹部CTや大腸内視鏡による観察では、回盲部の潰瘍は全例で改善し、5例では6か月までに完全に消失、12か月では10例中9例で完全に消失していた。経過中2例で4週、4ヶ月の時点で一過性の悪化を認め、下腹部の圧痛とCRPおよび血沈の陽性化を認めた。腸管の安静とインフリキシマブの増量、投与間隔を8週から6週へと短縮することで改善した。
効果はステロイドの減量にも関わらず、13ヶ月から36ヶ月まで持続した。経過観察期間中に10名の患者すべてにインフリキシマブの重篤な副作用は認めなかった。

コメント
西日本の膠原病診療では実績のある大学病院からの報告です。Rheumatologyというイギリスリウマチ学会の機関誌に編集者への手紙という形で最近掲載されました。
最大3年までの経過観察では、有効性は高く、重篤な副作用はなかったと考察されています。今回の対象者は、既存の治療が無効、あるいは困難な人を対象にしていますが、リウマチなどの関節炎では、早期からインフリキシマブを導入し、関節の変形などの永続的な障害を防ぐ方向にあり、より多数での検討が必要なことは疑いがないと前置きした上で、腸型ベーチェットでも狭窄などの障害が起きる前の可及的早期からの導入の可能性を示唆しています。


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