医者として・患者として

地域医療

満開近い桜の中で新しい学生や研修医の参加を得て、慌ただしい中にも新年度がスタートしました。年度末で退職した同僚は2名、それぞれ開業の道を選び、新たに地域の中規模病院の中核となる内科部分が撤退、地域の勤務医不足の状況に変わりはありません。私の…

わずかであっても着実な進歩を

たくさんの医学研究がなされています。 医学研究の目的は、患者さんの病気の治癒や症状が改善されること、より優れた診断法が確立される、病気のメカニズムかわかるといったことが、相互にからみあっています。 医学の世界も、恐らくは他の職場と同様、個人…

ガイドライン

患者さんの診断が確定して治療方針を決める際に最近はガイドラインという病気ごとに決められた手引書が参考にされます。ガイドライン=基準書と訳すと、何かこれに従わなければいけないかのようにも感じられます。実際、ガイドラインが多く作られるようにな…

二つの自分

病気に向かう自分にも二面があります。 一つは医者としての自分とも重なり合うのですが、冷静に合理的に病気を考える自分です。もう一つは、関節の痛みや腹痛、倦怠感など病気に悩んでいる自分で、どうにもならないことはわかっていても、苦痛を誰かにわかっ…

がん哲学外来

少し前になりますが、患者に哲学外来をしているという、私とそれ程年の違いのないがんの基礎研究者のご講演を聴いて来ました。がんのメカニズムを研究した者が患者に伝えられることは確かにあるのだろうと思います。 私たち医療者にとっては沢山の経験のある…

センター試験初日

1月に入り何かと多忙な日々を過ごしています。 今日は朝からセンター試験の試験監督を務めてきました。朝7時20分に家を出て、最後のリスニング試験の答案の引き渡しが終わった午後7時まで、昼食を食べた20分を除いてほぼ立ちづくめで少し疲れました。日頃不…

ハートモニター

医者になって数年目の頃、患者さんの臨終に際して感じた違和感を今でも思い出します。 癌患者さんを担当し、当初は病気が良くなることを目指して患者さんと治療をしていましたが、ある時を境に治療は症状の緩和へと方向転換することになりました。家族も根気…

秋さんへ

年も押し詰まり、休みに入るまで慌ただしい日々を過ごしています。私は19日、20日と癌治療認定医のセミナーと試験を受けに行ってきました。朝9時から夜7時までセミナーがあり、その翌日は午前セミナーがあり、午後に試験がありました。受験者は30歳…

産科病棟

勤務する病院の産科病棟に約15年ぶりに寄ってきました。 自分の子供が生まれた時に訪れて以来です。長男の出産時には、救急・麻酔科研修で300例程度の全身麻酔をかけて自信をつけていた私は、「痛みだったら止めてあげるから無痛分娩にする?」などという不用…

医師確保

2年間の初期研修を3月に終える予定の研修医が専門研修のため見学に来てくれました。 朝9時に待ち合わせをして、午前院内を案内し、昼食を一緒に済ませ、午後の検査・処置を見学してもらいました。夜医局の若手の意見も聞いてもらおうと一緒に食事に行き、今…

家族

子供が、「お父さん、僕はいつか家族の誰かが亡くなったら1日だけは悲しむけどその後は気持ちを切り替えようと思う」と言う。ちょっと唐突だったけれど、年老いた祖父母のことや私が病気であることも知っているので、彼なりにいろいろなことを感じて、そして考…

新型インフルエンザワクチン接種

新型インフルエンザワクチンをうってきました。 インフルエンザ診療に携わる医療関係者が優先され、19日から接種が始まりました。外来診療での自身の感染や抵抗力の下がった入院患者さんへの感染源にならないようにという意味があります。 不活化ワクチンで…

学会参加2 京都大学山中伸弥教授講演

先日ノーベル賞の登竜門といわれるラスカー賞を受賞され、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を世界で初めて作成したことで知られる京都大学iPS細胞研究センター長の山中伸弥教授から、不老不死、万能細胞であるiPS細胞の誕生から現在に至るまでの研究の概要…

学会参加

京都で開催されている学会に参加しています。年に一度の大きな学会で、1万5千人もの医師の参加が予想されています。 クローン病などでのレミケードの使用成績は多数報告され、目新しくはなくなっています。腸型ベーチェットについては、イムラン(アザチオプ…

9月に寄せて

不順な夏が過ぎ、明け方寒い日が続いています。入院・退院から1年が経過しました。トラウマとなった大変だった日々が思い出されますが、何とか大きな痛手にはならず今日に至っています。本日は、朝病院に行き、担当患者さんに変わりがないことを確認した後、…

ひと時の別れ―生き続ける想い

以前、このブログでもとりあげた患者さんが緩和医療の専門病床に移られて、ほどなく永眠されたとの連絡を担当医から受けていました。しばらくして、奥様から丁重なお手紙をいただきました。 http://d.hatena.ne.jp/sakurasasuke/20090614#1244982292「・・・…

医者と患者の理解に必要なこと

先日、病院主催の医療安全に関する講習会があり、参加しました。 弁護士でもあり、大学教授でもある講師から、医療訴訟の現状についての解説があり、300名近く入る講堂が埋まるほどの参加者でした。日頃は患者側の弁護人として活動されているとのことで、さ…

レミケードの特殊型ベーチェットへの適応外使用

インフリキシマブ(商品名レミケード)は現状では眼病変以外には保険適応がありませんし、適応拡大の目処もたっていません。リウマチでは既に広く使われており、近々、使用中の有効性の減弱に対して、より多くの量まで使用できるように改正される予定です。…

ひと時のお別れ

担当していたがん患者さんとひと時のお別れをしました。 以前にもとりあげたことのある患者さんが体調を崩され、入院していただきました。初めてお会いした時から約2年近く入院、外来で診察させていただきました。最初の入院時に、がんであること、手術がで…

緩和ケア講習会

5月30日(土)、31日(日)と上記講習会に参加してきました。 体調からはできれば休んでいたい土曜・日曜ですが、自分が自分であるために頑張らなければいけないときもあります。1日目は午後1時30分から午後9時まで、2日目は朝9時から午後6時までのタイトなス…

学会参加

先週、中部地方で開かれた学会に参加してきました。 私の専門とする領域では、ベーチェット病が取り上げられるのは全体のごく一部ですが、必ず目は通すようにしています。 ベーチェット病に限らず、最近の学会における最先端分野と言えるのは分子生物学を応…

難病医療と研究の形

昨今の医療崩壊が明らかとなった現状では、望むべくもないことなのでしょうが、以前から描いていた希望を書いてみました。ベーチェットのような稀な疾患では、ごく少数の病院を除けば、都会の大病院であっても診療経験は限られるのが現状です。病型や重症度…

OSCE (オスキー)

2月の終わりに全国の医学部でOSCEと呼ばれる試験が行われました。これは医学部の5年生が臨床実習に入る前の実技試験とも言えるものです。 医療面接、頭頚部、胸部、腹部、神経、救急、外科基本手技について全国の医学生に対して試験が行われます。各制限時間…

在宅診療ネットワーク

在宅診療を円滑に進めるために各地で様々な取り組みがなされています。長崎市での取り組みについての講演会に行ってきました。本来は緩和医療の研究会ですが、今回は在宅での緩和医療の取り組みを含めた講演でした。在宅医療の担い手は開業医さんです。その…

2009年の初めに

昨年は医療崩壊が地方のみならず、都会でも明らかとなり、行政も医師養成へと大きく方向転換した年でした。 私が医学生であった1980年代は、古い医学と新しい医学の移行期でした。田中角栄元首相が、日本列島改造論や一県一医大を提唱し、漸次医大が作られま…

講演会「ホスピスから学ぶ対人援助」から

めぐみ在宅クリニックの小澤竹俊先生のご講演を聴いてきました。テレビでも在宅終末期医療の担い手として取り上げられることも多いので、ご存知の方も多いと思います。私もこれまで多くの死に立ち会ってきました。医師になって1年目、まだインターネットも…

未承認薬使用問題検討会議 第16回速記録ーリロナセプト

ドラッグ・ラグの側面として、断片的な情報が先行するため、その人にとっての安全性などの確認が不十分な状況でも、個人輸入などの方法で治療が開始されることが問題となります。厚生労働省としても、こうした問題の存在は十分理解しており、定期的な検討の…

FDAが注視するTNF阻害剤ー有害事象報告システムから

出典 http://www.fda.gov/cder/aers/potential_signals/potential_signals_2008Q1.htm Potential Signals of Serious Risks/New Safety Information Identified by the Adverse Event Reporting System (AERS) January - March 2008 Tumor Necrosis Factor (…

ドラッグ・ラグ

ベーチェット病の眼病変に対して、インフリキシマブが承認されたのは2007年1月26日、関係者のご努力に陳情を重ねて4年の歳月を要しています。これは画期的なできごとでしたが、今のところ血管・神経・腸型ベーチェットに関しては認可される予定はたっていま…