在宅診療ネットワーク

在宅診療を円滑に進めるために各地で様々な取り組みがなされています。

長崎市での取り組みについての講演会に行ってきました。本来は緩和医療の研究会ですが、今回は在宅での緩和医療の取り組みを含めた講演でした。

在宅医療の担い手は開業医さんです。その多くは一人の医師で開設され、24時間365日をどう対応するかが課題になっており、全国的に見ても普及している地域は限られています。長崎市では開業医、必要時に受け入れる後方病院、薬剤師、訪問看護ステーション、歯科医師が連携をとって対応する試みが行われています。

できることなら慣れ親しんだ自宅で最期を迎えたいと思う方は多いと思います。高齢者の増加や高額な検査・薬剤が広まるにつれ、医療費が増加し、医療費削減が進められ、この観点からも病院から在宅へという政策的な誘導が行われています。一方で、新規に開業する医師は、経営的な安定をもとめ在宅診療へ参入する傾向も認められます。これらが相まって、現在、約10−15%の方が在宅で最期を迎えるようになっています。

先日も抗がん剤による外来治療の効果が薄れてきた患者さんと、これからをどうしようと話し合いました。当院への入院、緩和病棟のある病院、在宅など、いくつかの選択肢を提示しました。最大限取れるだけ時間をとって、少しずつ、慎重に、言葉を選びながら、でも嘘やごまかし、気休めは言いません、それがこの瞬間に患者さんとその人生に提示できる最大の尊敬と誠実さだと思うからです。次回も、あるいはご家族を交えて相談することになるでしょう。患者さんは、家族の負担も考え、延命は望まない、最後が近づいたら緩和医療へと明確な意思をもっておられました。

困った時はいつでも、ふつうの医療を受けられる、ちょっと前なら当たり前の制度が今は手の届かないものになりつつあります。豊かになったと言われる社会ですが、本当に私たちは良い方向へ向いているのでしょうか。無駄を省きつつ、医療福祉に比重を置いた構造改革を望むのは私だけではないと思います。


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