地域医療

満開近い桜の中で新しい学生や研修医の参加を得て、慌ただしい中にも新年度がスタートしました。年度末で退職した同僚は2名、それぞれ開業の道を選び、新たに地域の中規模病院の中核となる内科部分が撤退、地域の勤務医不足の状況に変わりはありません。

私の住む地域では、総務省が後ろ盾となって救急受け容れのシステムの整備が検討されています。多発した救急患者のたらい回し事例を教訓に全国でシステムの整備が進められているようです。患者の立場としてみれば、困ったときに確実に診療してもらえる医療機関が確保できることはとても大切なことです。

医師不足に悩む地域医療としてみると、「週のうちに2-3日も当直をして、日中もこなしきれない業務を夜まで延長して何とか回っている状況で、この上どうしろというのか?」という声も聞こえてきます。私のいる施設は人員的には恵まれてはいますが、常に100名以上が入院待ちの状況で、日頃診察している患者さん以外の救急を受け入れるベッドがないことが大きな問題となっています。入院予定が決まっていても前夜に緊急入院があり、当日の朝になってから、時には入院の準備をして来院されてからも入院を延期していただくような状況になることもありました。

私が医師になった頃は、ベッドがなければ病院の他科の病床であっても仮に入院させることも行われていましたし、そうしてでも対応することが医療者としての務めであり、誇りでもあったように思えました。昨今の医療の質と安全を重視する流れは、こうした人、もの、設備に裏付けられていない医療は患者からも好ましくないとされる一方で、こうまでして受け容れて結果が好ましくなかったときに責任を問われるのではやっていられないと考える医師や管理者も少なくありません。実際、この急病では、これとこの検査をしていなければ、医療水準として適切ではないと判断されてしまうのであれば、自ずと施設は限定されてしまいます。

医療従事者の労働条件の問題、これらを解決できる医療費の負担を国や国民の納得が得られるかということだと思います。労働条件が改善すれば、勤務医を志向する医師や結婚後も病院に勤める医師や看護師は必ず増えてくると思います。今や医学部入学者の30%は女性なのですから、彼女たちがしっかり働ける環境をつくることは、医学部を5校新たにつくるのに匹敵するのではないかとさえ感じます。医療従事者の賃金を上げるのではなく、実動可能な医師定員を増やして、医師も看護師も自分や子供が病気になった時は休みをとれるような安定した労働条件を確保することが必要です。患者へのしわ寄せが明らかになりつつある今、現状対応のための小手先の対応はさておき、根本的な見直しが必要です。
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