難病医療と研究の形

昨今の医療崩壊が明らかとなった現状では、望むべくもないことなのでしょうが、以前から描いていた希望を書いてみました。

ベーチェットのような稀な疾患では、ごく少数の病院を除けば、都会の大病院であっても診療経験は限られるのが現状です。病型や重症度によっても治療は異なりますし、様々な診療科における診療が必要となることも多い病気ですので、治療の連携や情報の共有などでも不自由や困難を感じられる方も多いのではないでしょうか?原因の解明や治療法の開発を目指す研究面でも、患者数の多い疾患に比べて優先順位が低くなってしまいます。東大に設置されている全国的な治験登録UMIN-CTRにおいて、現在進行中の治験はリウマチ14件、SLE 6件に対して、ベーチェット病は1件もありません。一方、アメリカのNIHでは、アメリカ医以外からの登録も含めると、リウマチについては792件の登録があり、ベーチェット病の治験は現時点で合計16件が登録され、9件が中断・終了、7件が募集中です。日本で臨床治験が進まない背景には、様々な要因があります。治験=実験?のような患者側の敷居の高さやデータを得るためのコスト・時間が海外に比べてかかること、治験専従者が少ないため医師・薬剤師とも忙しい診療の片手間に膨大な書類と格闘しなければならず進まない、などが代表的なものです。

この病気の原因を究明し、より副作用が少なく、有効な治療法の開発を進めて欲しいと切実に思うのですが、研究には基盤作りが不可欠です。研究者と対象となる患者、設備、研究費が揃わなければ研究は進みません。このためには各難病ごとに基盤となる診療・研究機関が必要です。現在エイズなどで国際医療センターがその役割を果たしているように、患者数の少ない難病ごとにこうしたセンター作りが望ましいです。現在ある各地の国立医療センターにこの機能を担わせるのも一つの方法です。各難病間には類似するものもありますので、類似する疾患は同一のセンターに組み込むことが効率的です。

どこからでも1-2時間以内に通えるところに、地域拠点病院を作り、それらを統括するセンター病院を一つ設定する。患者は拠点病院に行くことで、標準的な診療を受けることができます。病院・研究者側にすれば、新しい治療研究を推進したり、患者さんからの血液などの検体を対象に研究することも容易になります。拠点病院では基本的に共通の治療方針に基づいて診療し、臨床情報を集積する。いくつかの新しい治療法(治験)を設定し、その計画を拠点病院全体で審査後、公開し、計画の内容をガラス張りにする。十分なインフォームドコンセントのもとに治験を行う。次にこれは非常に大切なことだと思うのですが、こうした計画には患者側も参加することが必要です。新しい良い治療法は医療者と患者とで共に作って行く以外ないからです。

厚生労働省の難治性疾患研究班も存在しますが、患者側が期待するような臨床的な問題を解決するために具体的に行動する機関として位置づけられるものではありません。研究費としては文部科学省厚生労働省の科学研究費がありますが、施設ごとの研究ではなく、各拠点病院や研究施設と連携し、臨床研究と基礎研究の向かうべき方向を見据えた戦略的な計画が不可欠です。

集められたデータを世界に発信し、国内では新しい治療を保険承認に向けて、医療側、患者側の両者から働きかける。結果としてより良い標準治療を更新してゆくことになります。グローバル化した社会では、人種間の相違も考慮しつつ、将来的には日本の中だけではなく、世界の中でも構築されてゆくことになることが望ましいと考えますし、既にそうした活動も見受けられます。


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