FDAが注視するTNF阻害剤ー有害事象報告システムから

出典 http://www.fda.gov/cder/aers/potential_signals/potential_signals_2008Q1.htm
Potential Signals of Serious Risks/New Safety Information Identified by the Adverse Event Reporting System (AERS) January - March 2008

 Tumor Necrosis Factor (TNF) Blockers: Cancers in children and young adults

注釈
2007年の連邦法で、FDAは4半期ごとに薬剤に関連した副作用の可能性があるすべての事象について情報を開示することが定められています。2008年9月5日にその第1報が示されました。
最初に申し上げておきたい事はFDAは薬剤と有害事象の因果関係を認めたわけでもなく、当該薬剤の処方や服用の中止も求めていないことです。有害事象報告システムから重篤な副作用の可能性の段階で情報を開示していることになります
今回、リストされた20の薬剤の最後に、インフリキシマブ、エンブレルなどのTNF阻害剤と小児・青年における発ガンが観察項目として挙げられていました。

以前から、TNF(腫瘍壊死因子)は、炎症に対する作用と同時に、抗腫瘍効果を併せ持ち、これを抑制することは、腫瘍の発生や増大の懸念がされており、添付文書にも記載されています。特に小児、青年では、TNF阻害剤を使った際に、成人では極めて頻度の低い特殊型リンパ腫の発生が報告されており、併用する免疫抑制剤の影響も含めて注意が促されています。こうした注意もこの有害事象報告システムから拾い上げられたもので、頻度の低い有害事象では、情報収集システムでの集積が極めて重要です。頻度が低く、長期使用でないと発生しない、あるいは薬物相互作用など複合的要素が発生に関わる有害事象では、申請時の限られたデータでは現実的には評価は不可能ではないかと思います。日本にも市販後調査といって、症例を追跡調査するシステムがありますが、メーカーへの依存性が高く、承認からの一定症例に限定され、低頻度、複合的要素の関与する事象の検出には限界があります。
承認前に評価できることの限界や承認後の情報収集に重点がある事項など、メーカーも医師も、患者も理解し、日本でも情報の開示とアクセスの道筋の確立が望まれます。



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