韓国患者における骨髄不全を伴うベーチェット病:臨床的な特徴と小腸潰瘍とトリソミー8との関連

Rheumatology (Oxford). 2008 Aug;47(8):1228-30.
Ahn JK, Cha HS, Koh EM, Kim SH, Kim YG, Lee CK, Yoo B.
Department of Medicine, Samsung Medical Center, Sungkyunkwan University School of Medicine, 50 IIwon-Dong, Gangnam-Gu, Seoul 135-710, Republic of Korea.

目的:本研究の目的は、韓国における骨髄異形成症候群および再生不良性貧血などに分類される骨髄不全を伴うベーチェット病の臨床的な特徴を決定することである。
方法:ベーチェット病に合併した骨髄不全13名(骨髄異形成症候群8名、再生不良性貧血5名)と骨髄不全を伴わないベーチェット病66名について、過去に遡って調査した。これらの患者の全てが国際ベーチェット病研究グループの診断基準を満たしていた。
結果:骨髄不全を伴うベーチェット病患者では伴わない患者に比べて有意に低い白血球数、ヘモグロビンレベル、血小板数を示した(P < 0.001)。骨髄不全を伴う患者では、伴わない患者に比べて、ベーチェット病の診断時に有意に高い血清CRP値を示した(P = 0.03)。小腸病変は骨髄不全を伴う患者では、伴わない患者より有意に高頻度に認められた(61.5% vs 13.6%, P = 0.001)。 染色体異常は骨髄不全を伴う患者の90.9%に認められた。染色体異常の中では、8番染色体トリソミーが最も高頻度で、70%の患者に認められた。骨髄不全を合併した治療抵抗性ベーチェット病患者の4名で造血幹細胞移植による骨髄不全の治療に成功し、 ベーチェット病も臨床的な寛解が得られた。結論:われわれの研究は骨髄不全を伴うベーチェット病では小腸潰瘍は特徴的な所見であることを示している。また、骨髄不全を伴うベーチェット病の病因として、細胞遺伝学的異常、特に8番染色体トリソミーが重要な役割を果たしていることが示唆された。

注:ベーチェット病の重大な合併症の一つとして骨髄異形成症候群の合併があります。骨髄異形成症候群は骨髄での造血が不十分となるだけでなく、白血病などの前段階であることもあります。これまでもベーチェット病に骨髄異形成症候群の合併の多いこと、合併した症例では消化管に多数の潰瘍が認められることが知られており、腸潰瘍には他の特殊型とは違う意味があると指摘されていました。慢性の炎症が骨髄にどのように影響を及ぼし、骨髄細胞の染色体や遺伝子レベルで変化をもたらすのかは明らかではありません。骨髄異形成症候群や再生不良性貧血の程度などによっては、骨髄移植や造血幹細胞移植の適応になり、骨髄障害だけでなくベーチェット病そのものも寛解させることができたとする報告が増えてきていますが、短期的な治療の安全性、治療を受けた患者の長期予後、どういう患者が適応となるのか、などまだまだ課題は多く残されています。

関連文献:以下のような日本から腸型ベーチェット病に合併した骨髄異形成症候群を臍帯血移植で治療したとの報告もあります。
Successful treatment of myelodysplastic syndrome (MDS)-related intestinal Behcet's disease by up-front cord blood transplantation.Intern Med. 2007;46(20):1753-6. Epub 2007 Oct 15.Nonami A, Takenaka K, Sumida C, Aizawa K, Kamezaki K, Miyamoto T, Harada N, Nagafuji K, Teshima T, Harada M.First Department of Internal Medicine, Graduate School of Medicine, Kyushu University, Fukuoka.


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