関節リウマチにおける生物学的製剤の現状(東京女子医大リウマチ痛風センターHPより引用)

多数の分子標的薬の開発が、さまざまな疾患で進んでいます。抗炎症という点では、何といっても関節リウマチにおける生物学的製剤の臨床応用が先を走っています。ベーチェット病における今後の展開を考えるうえで参考になります。以下、東京女子医大リウマチ痛風センターHPより引用です。
生物学的製剤は最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品で、関節リウマチに対しては2003年から国内での使用が開始されています。これまでの抗リウマチ薬に比べて薬剤費が高価ですが、有効性にかなりの期待ができる薬剤で、特に関節破壊抑制効果に優れていることが知られています。リウマトレックスを中心とする治療で充分に病勢のコントロールが出来ない場合、出来るだけ早期に生物学的製剤を導入して関節破壊を防ぐという治療指針が国際的にも広く受け入れられています。
注意すべき副作用は重症感染症で、中でもニューモシスティス肺炎や細菌性肺炎、結核などの肺病変には特に注意が必要です。投与前のスクリーニング検査が従来の抗リウマチ薬と比べて厳格に行われているため、 結核については当初憂慮されていたよりも少ない印象です。しかし生物学的製剤は強力な免疫抑制作用を持つため、免疫抑制下でリスクが高まる疾病であるニューモシスティス肺炎や細菌性肺炎を完全に避けることは難しく、頻度は少ないながらも発生が続いています。早期に対応することが重要ですから、急性の発熱、咳、息苦しさなどの異常を感じた場合、直ちに主治医に連絡して胸部X線などの検査を行うようにして下さい。その他、点滴剤の場合は投与時反応(発熱、頭痛、発疹など)や、皮下注製剤の場合は注射部位の局所反応(発赤、腫脹など)がみられる場合があります。

現在以下の製剤が使用可能で、今後も新たな製剤の発売が予定されています。最初にどの製剤を使用すべきかという明確な指針はなく、欧州リウマチ学会 (European League against Rheumatic Diseases, EULAR) では、国内で発売されている全ての生物学的製剤(TNF阻害薬 [レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア]、抗IL-6受容体抗体 [アクテムラ]、T細胞選択的共刺激調節薬 [アバタセプト])を最初に使用する生物学的製剤として推奨しています。標的とする生体内物質(TNF、IL-6、T細胞)以外にも、投与方法(点滴もしくは皮下注射)、投与間隔(週1-2回から2ヶ月に1回)、薬剤費(3割負担で月1.5万円程度から3万円強)ほか各々特徴がありますので、以下のコメントを参考に主治医の先生と相談して使用する生物学的製剤を決めて下さい。ただし薬剤費については高額療養費制度の対象となる可能性もあり、多数該当という仕組みもあって単純な比較は難しく、また別途補助制度などもあるため薬価だけで一律に説明することは困難です。必要に応じ加入する健康保険にも問い合わせてみて下さい。

1)レミケード:レミケードはTNFという炎症反応に関与する生体内物質の働きを抗体によって抑える抗体製剤です。2時間程度かけて点滴します。投与間隔は、初回投与後、2週後、6週後、その後は8週間隔が基本です。ヒトとマウス由来で遺伝子工学的手法を用いて作られているため、効果を弱める抗体が出現することがあり、リウマトレックスの内服が必要です。2009年から増量もしくは投与間隔の短縮が可能となり、効果減弱する割合は減っています。自己負担額が隔月に集中するため、高額療養費制度に該当しやすいという特徴があります。

2)エンブレル:エンブレルもレミケードと同様にTNFの働きを抑えますが、構造がレミケードとは異なる受容体製剤です。週に1回もしくは2回の皮下注射で投与します。一定の条件を満たす方は在宅注射が可能です。完全ヒト化製剤のためリウマトレックスは内服しなくても使用できます。しかし、エンブレルとリウマトレックスを併用したほうが、エンブレル単独に比べ骨破壊の抑制が強いことが報告されています。週1回25mg投与(通常用量の半量)の場合には生物学的製剤の中で安価に導入できるメリットもあり、当センターでは最も使用患者数の多い生物学的製剤となっています(平成25年7月現在)。レミケードと異なり標準用量以上での使用は出来ません。

3)ヒュミラ:ヒュミラはレミケードと同様にTNFの働きを抑える抗体製剤です。2週間に一度皮下注射します。一定の条件を満たす方は在宅注射が可能です。リウマトレックスの内服は必須ではありませんが、併用した方が骨破壊の抑制が強いことがわかっています。

4)アクテムラ:アクテムラはIL-6というTNFと同様に炎症反応に関与している生体内物質の作用を強力に抑制します。日本で開発された生物学的製剤で、投与は4週間に一回、約1時間の点滴です。リウマトレックスの内服は問いません。炎症反応を強力に抑え込むことで、感染症になった時の自覚症状、他覚所見が希薄になるため、感染の重症化に注意する必要があります。異常を自覚したら、軽度であってもすぐにご連絡ください。2012年の薬価改定で薬価が大きく引き下げられ、標準使用量では体重50kgの場合最も安価な生物学的製剤となりました。

5)オレンシア:オレンシアは2010年9月に発売がはじまった生物学的製剤です。他の生物学的製剤はサイトカイン(TNFやIL6)の働きを抑えますが、オレンシアは関節リウマチの発症に関与するT細胞の活性化を抑制することでサイトカインの産生を抑えます。関節リウマチという病気をより根本に近い段階から抑えることができる可能性が示唆されています。初回投与後、2週後、4週後に点滴投与(30分)し、以降4週の間隔で点滴します。

6)シンポニー:「シンポニー」は2011年9月に発売がはじまった最新の生物学的製剤です。ヒュミラやレミケードと同様にTNFの働きを抑える抗体製剤です。4週に1回の皮下投与で済むため、投与方法がもっとも簡便であることが特徴に上げられます。投与量の変更が可能なのもこの製剤の大きな特徴の一つで、状態に応じて標準用量の倍量である1回100mgに増量して使用することが可能です。

7)シムジア:「シムジア」は2013年にあらたに発売がはじまった生物学的製剤です。ヒュミラやレミケード、シンポニーと同様にTNFの働きを抑える抗ヒトTNFα抗体です。投与間隔は、初回投与後、2週後、4週後に1回400mgを皮下注射し、その後は2週間隔に1回200mgの皮下注射が基本ですが、症状が安定したら4週間隔で1回400mgを皮下注射することも可能です。抗体製剤ですが、Fc領域が除かれていて、PEG化されているために分子量が小さいことが特徴で、注射部位反応の軽減が期待されています。

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