セカンド・オピニオン

年に1-2回ですが、セカンド・オピニオンの依頼を受けます。私は、他の医師などの意見を参考にすることには大賛成ですが、個人的にはセカンド・オピニオンという制度にはなじめません。保険診療と違ってかなり高額なお金がかかる割に、必ずしも理解が深まったと言えないことも多いからです。少し、その理由について考えてみたいと思います。
いちばん大きな問題は、セカンド・オピニオンでは、そこに至るまでの思いや、それまでの病状や病気に対する理解度に差があって、同じ時間の対応でも、納得していただける場合も、消化不良で終わってしまうこともあります。でも、これはある意味で当然のことと考えています。これはセカンド・オピニオンだけでなく、担当医師との面談にも通じることかもしれませんが、考えておくことがあるように思います。その大きな問題の二つは、感情と病状の理解です。
誰でも、自分の望まない、予期しない病状が示されたとき、混乱し、困惑することは当然のことです。いろいろな意見を聞いてみたい、できればその中にもっと自分にとって受け入れやすい、心地よい答えをしてくれる医師がいるかもしれない、と期待するのも当然でしょう。反面、自分にとって好ましくない意見については、疑念を抱くのも無理からぬことです。お医者さんがそう言っているのだから、あの先生は評判がいいから、肩書が院長、教授であるから・・、などという理由で納得している場合もあると思います。納得できる、本当の理解にたどり着くのには、自分の感情を整理し、段階を踏みながらも理解を深めてゆく必要があります。
ほとんどの医師は患者さんの病状や背景などを考えて、最も良いと考えられる治療法を提案します。実際、現在は治療の標準化が進んでおり、超高齢や持病があるなど、標準的な治療が困難な場合を除いて、病状により一番推奨される治療は決まることが多いです。時には、一つではなく、手術や薬物治療など、いくつかの選択肢が提示されることもあるでしょう。個人的には絶対的な選択肢はないと思っています、病状からはこの治療が一番勧められことを示したうえで、最終的には患者さん自身の判断が必要になります。結果的に患者さんが病状を理解されたうえの判断であれば、標準治療以外の選択をされる場合があってもまったく問題ないと考えています。それは患者さんの人生観によることだと考えるからです。
自分の納得できる選択肢にたどり着くために大切なことは、やはり自分から行動して理解することが必要です。医師からの説明やインターネットなどの情報を確認し、疑問や自分に合わない点を整理して、主治医やセカンド・オピニオン担当医と短い時間でも相談を重ねることが大切だと思っています。

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地下鉄で・・

仕事の移動時間の地下鉄でのことでした。

キャリーバックを引いた70歳位の女性が、ちょうど空いていた隣の席に座ってこられました。「この電車は○○駅に止まりますよね!」と尋ねられたのですが、乗り入れも複雑で自分の乗った電車の最終駅がどこか自信がありません。私も確認せずに乗ってしまったこと、あやふやなことも言えないので確かなことはわかりませんとお伝えしたところから、話しが始まりました。
近畿地方から今朝出発して、娘さんの住む地域でコスモスが群生しているのを見るために向かう途中とのことでした。音楽が好きでオペラにも興味があること、携帯の待ち受け画面の写真まで拝見しました。
実家へ帰る電車では隣合わせた人と話したことはありますが、都内の地下鉄では初めての経験でした。束の間でしたがほのぼのとした時間をいただきました。
どうぞ良い連休をお過ごしください。

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ヒュミラのベーチェット腸病変への保険承認データ

昨日、品川であったヒュミラの講演会に参加してきました。講演は、3部構成で、クローン病、ベーチェット腸病変、潰瘍性大腸炎への使用成績が報告されました。

クローンや潰瘍性大腸炎についての報告は、症例数は多く、現在予定されている臨床試験の対象患者数は1500例というものもありました。ベーチェット腸病変については全体の20%程度の時間が割かれていましたが、以下に概要を記載します。

ベーチェット病腸病変に関する発表2つのうちの前半では、日本のベーチェット病腸病変の全体像が説明がありました。ベーチェット病は18000名で、男女差はなく、患者数はこの20年間ほとんど変化していないこと、このうち20%の4000人が腸病変を有している。演者の施設では24名の経験があり、このうち10名は穿孔などのために手術を受け、さらに2名は2回目の手術を受けたことがあった。ペンタサなどは60-70%に、ステロイドは40-50%に、コルヒチンは50%。その他栄養療法が行われているとのことでした。

後半では、保険承認の根拠となった多施設共同試験の結果が報告されました。
今回の評価では、腸病変の潰瘍の大きさが10mm以上、完全型、不全型、ステロイドや免疫調整薬など既存の治療で不十分が対象となった。32名で評価が検討され、12名が除外され、20名が最終的に評価対象となった。内訳は、完全型1名、不完全型10名、疑い9名で、随伴病変としては、口腔内アフタは全例に、皮膚病変は13名、眼病変は2名、陰部潰瘍は9名に認められた。回盲部の潰瘍の多発性は、1-2個8名、2-3個5名、4個以上7名であった。一次評価項目としては投与開始後24週目の改善率で、症状がなくなり、内視鏡所見が痕だけとなった「完全寛解」は4名20%に、「著明改善」は9名45%に認められた。自覚症状の変化をみると、症状がなくなったものが9名45%、ほとんど支障なし以上となったものが13名65%、何らかの改善が見られたもの16名80%でした。内視鏡での評価は、24週時点で痕だけとなったのが9名45%、著明に縮小以上の改善が12名60%とされています。随伴した、アフタ、皮膚、陰部潰瘍などにも概ね70%程度の有効性が認められているようです。薬の副作用(有害事象)については、5名に認められたものの重症なものはなく、中止が2名あった、と報告されました。

投与後24週までの、急性期の治療、寛解導入といわれる効果を主に評価したもので、症例数も20例と限られた臨床試験ですが、予想通りの有効性と一定の安全性が日本人でも確認された結果となったと思います。長期的な有効性、安全性、休薬・中止の可能性などは、これからデータが集積されていくものと思います。

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ベーチェット病腸病変へのヒュミラの適応

以前、ベーチェット病の腸病変にヒュミラの保険承認が下りたことは以前のブログでお伝えしました。同じ抗TNF阻害薬であるレミケードやエタネルセプトは保険適応になっていませんが、以前から、眼病変やリウマチがなどあれば必要に迫られて使われることもありました。
ベーチェット病の腸病変には難治性のものもありますが、一過性なものも少なくない印象をもっています。活動性が下がればステロイドも中止でき、同様にヒュミラもレミケードも必要でなくなる場合もあるようにも思います。
ヒュミラの添付文書には、他の治療法が無効な場合に使用すると記載されていますが、こうした薬をどのように実際に減量・中止にもっていけるかは未解決な問題です。

私は不完全型ですが腸病変のひどい時にはステロイドを必要としました。その後減量中止し、今は、その他の薬でコントロールできています。眼や神経病変の出現があれば抗TNF阻害薬の使用も考えています。家族や自分の生活を守るためには有意性があると考えるからです。でも私の担当している患者さんでも、抗TNF阻害薬を必要とする患者さんは決して多くありません。
論文などでは2-3年までの経過しか記載されていないことが多く、ベーチェット、特に腸病変については、こうした情報は十分とは言えません。実際に、腸病変にヒュミラやレミケードを使用されている方に、眼や神経を含めてどのような状況で使われ、その後患者の実感や長期的な状況をうかがってみたいと思いました。

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特定疾患更新

特定疾患更新の時期となりました。

毎年300件近い申請書の審査を行います。今年も現在の症状や治療状況などを踏まえて継続か否かを判断することになります

一枚一枚目を通して、主治医から提供される情報の向こうにいる患者さんを思い描くこともあります。病気と闘っている人は特定疾患とは限りません。一方では公平性も保たれる必要はあります。症状や検査結果などの客観的な記録を提示することが求められています。
リウマチなどの病気では昔に比べて飛躍的なスピードでメカニズムの解明や薬の開発が進んでいます。みんな、みんながんばろう!患者も、医療者も力を合わせて・。

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いじめの記憶

お盆休みに合わせて生まれ故郷で開催された中学校の同窓会に参加してきました。高校のものは何度か参加したことがあったのですが、中学のものは卒業後初めてでした。
会も中頃、一人ひとり挨拶をすることになって、一人から当時いじめられていたことの話がありました。いじめた側として名指しされた人にはまったく記憶がなく、いじめられた側は30年以上経っても消えない心の傷になっているようでした。話しを聞きながら、その方が、これをきっかけに長いトラウマから抜け出せたら良いなと思いながら、次第に暗い気持ちになっていました。そういえば、私も病欠も多かったこともあってか、少なからずいじめの標的になっていたことを思い出しました。
いじめのトラウマというのは外からの暴力の記憶だけではなく、それを跳ね返せずに、受け入れざるを得なかった自分への嫌悪にあるのだと気づきました。中学生というのは、明確な意思もなく他者を傷つけてしまう、ある意味では残酷な時期で、何人かと話しながら、いろいろなことを笑って受け流せるようになったのも、人との出会い、病気や仕事と向かい合った歳月の中で身に着けることができたことかもしれません。
かつての中学生も、もちろん私を含めて、もう立派なおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんでした。流れた歳月、出会った人、失った人を思うと、限られたこれからの時間をほんとうに大切なことに使わなくてはと再確認する機会にもなりました。

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臨床研究

自分自身の専門分野でベーチェット病の患者さんを数人診療しています。少数の患者さんですが、数年の診察の経過を論文にまとめています。これは今年の課題の一つです。
本邦でのヒュミラの認可の際の患者数は20例程度でしたから、いかに対象患者が少ないかわかります。小さくても一歩ずつ前へ進んでいければ、いつはそれが当たり前になり、さらに先へ進んで、次の世代にはより効率的、有効な治療が受けられるようになるでしょう。