ベーチェット病に対する顆粒球・白血球除去療法

ベーチェット病で認められる異常として、血液の白血球の一つである好中球の増多や活性化が分かっており、病気の原因への関与が推定されています。この好中球や白血球を静脈から還流し、選択的に吸着するカラムと呼ばれる機器を用いて吸着除去し、体内へ戻すことで、潰瘍性大腸炎やリウマチ、ベーチェット病などで改善がみられることが報告されています。設備を必要とすること、体外循環にある程度の時間を要すること、数回程度を1セットとして繰り返す必要があることなどが難点であり、潰瘍性大腸炎では難治例の寛解導入療法として用いられることが多い。根治的な治療ではなく、他の治療への補助として行われることが多いです。
ベーチェット病に対する血漿交換や血球除去療法の始まりは、文献的には1980年代前半に遡ります。保険適応になっている潰瘍性大腸炎などに比べて患者数も少ないことから、ベーチェット病での応用の報告はPUBMEDという医学論文データベースで、「ベーチェット病」と「アフェレーシス」をキーワードにして検索すると、現時点でヒットするのは17報告程度で、英語に限るともっと少なくなります。5週間程度の治療終了後の効果は報告されていますが、より長期で使用された場合の報告はありません。考えられる使われ方としては、抗TNF療法が出現した今日では、抗TNF療法が無効であったり、使えない難治例などの場合などに限られると思います。現時点で日本では保険適応はありません。


1)J Am Acad Dermatol. 2004 Aug;51(2 Suppl):S83-7.Treatment of Behcet's disease with granulocyte and monocyte adsorption apheresis.Kanekura T, Gushi A, Iwata M, Fukumaru S, Sakamoto R, Kawahara K, Maruyama I, Kanzaki T.Department of Dermatology, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Japan.

口腔陰部潰瘍を有する男性と、陰部潰瘍と腹痛を訴える女性の2名の患者に5日間隔で、それぞれ5回、8回の顆粒球と単球の除去を行い、男性は劇的に改善し、女性例では潰瘍の縮小と腹痛の改善を認めた。


2)J Clin Apher. 2006 Jul;21(2):121-8.Granulocytapheresis in patients with refractory ocular Behcet's disease.Namba K, Sonoda KH, Kitamei H, Shiratori K, Ariyama A, Iwabuchi K, Onoé K, Saniabadi AR, Inaba S, Ishibashi T, Ohno S.Department of Ophthalmology and Visual Sciences, Hokkaido University Graduate School of Medicine, Sapporo, Japan.

ブドウ膜・網膜炎を有するベーチェット病患者における顆粒球除去療法の効果を非ランダム化、前向き試験で行った。14名(20-56歳)に対し週1回で5週の顆粒球吸着除去治療を行った。治療前6か月の眼発作回数は 4.21 +/- 1.6回から、治療後6か月では2.93 +/- 1.39に減少した ( P = 0.0275). 9例が改善し、5例は不変か、悪化した。難治性の眼病変に対して、顆粒球除去療法は、有効かつ安全な治療法である可能性がある。


3)SBT Science Series 2007; 2;96-1901. Adsorptive monocyte and granulocyte apheresis in the chronic inflammatory illness: ulcerous colitis,Crohn's disease, rheumatoid arthritis and Behcet's syndrome. J Munoz,M. Clavo,O. Garcia,D.Reina,A.Vidaller,R.Lafuente.L.I.Massuet,Spain.

6例のベーチェット病患者に週一回、5週まで単球・顆粒球除去療法を行った。6例で眼内の炎症と再発は改善した。プレドニゾロン必要量は治療後約50%減少した。


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