自分の主であるために

様々なお薬のアレルギーのある患者さんを診療しています。

多数のアレルギー歴のある患者さんに新しく治療することには、医師も患者さんも消極的になってしまいます。頻度の高い皮疹や1万人に一人の頻度であっても、ショックで命に関わることこともあることまで説明をするのですが、当然、患者さんはとてもご不安になられます。冷たいようですが、ここをオブラートに包んで説明することはできません。初めての患者さんやご家族からみたら、何と機械的で、他人事のように対応する医師なのだろうと思われるかもしれません。この患者さんの場合、少なくとも10回以上も病状やアレルギーについて説明して、いくつかの選択肢を示したうえで、最終的にできるだけリスクのある治療は避けて、どうしても避けれられない状況になったら、その時にはあらためて相談することになりました。

そして、避けられない日が来て、どうするか話し合いました。我々の印象としては、これまでのアレルギーの疑われるエピソードのすべてが因果関係が明確ではないことから、特に疑いの濃厚な薬だけ控えて、監視の下で行えれば治療は可能なようにも思えましたが、最重症のアナフィラキシー・ショックの可能性も否定できないこともあらためてお伝えしないわけにはいきません。その他、病気に由来する差し迫っているリスク、放置した場合のリスクなど、ご家族を含めて説明をし、さらに相談していただく時間をとった上で最終的に決断していただきました。

私自身、副作用の頻度や重症度なども知りやすい環境にありますし、それを理解する知識ももっています。それでも、自分の治療に際して、重篤な副作用は出るかでないかの二つに一つのように感じられたこともありましたので、患者さんにすればご不安になるのも無理からぬことだったと思います。

チーム全員で治療後の急性期を観察し、結果的には、これまで副作用があったといわれる薬でも副作用はなく、初期の治療目的を達することができました。治療は現在も続いていますが、薬に対する不安が大きかったようで、これらの経過を通じて治療を進めるうえでの大きな障壁がなくなりました。もっと早く治療に取り組めていればという思いはありますが、家族でもない私に、これ以外にどのような関わり方ができたのだろうかとも考えます。たとえ家族であっても、根本的には本人にしか決められないことのように思います。

新しい治療を受けるにしろ、受けないにしろ、自分と向き合い、情報を集め、できるだけ客観的に状況を理解することが、真に自分の主となるうえで大切なように思います。

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