小児ベーチェットに関する国際研究:リウマチ性、筋骨格病変患者110名の国際前向き研究-1年間の経過観察データ

Isabelle Kone et al and the PED-BD International Expert Committee*
Rheumatology (2011) 50 (1): 184-188.

要約
目的:ベーチェット病が疑われる患者に対する国際的な前向き研究の立ち上げのため、小児におけるこの疾患の定義のアルゴリズムを決めるためことを目的とした。
方法:世界的なエキスパートが集まり、この研究への登録の基準を以下のように定めた。再発性口腔内アフタに加えて、陰部潰瘍、結節性紅斑、濾包炎、毛嚢炎、針反応陽性、ブドウ膜炎、動静脈血栓ベーチェット病の家族歴のいづれかを有する者とした。 発症年齢は16歳未満、疾患の罹患期間は3年以下、前向きの経過観察期間は4年以上であった。インフォームド・コンセントはすべての患者から得た。委員会の専門医は、患者を以下のように3群に分類した。小児確診例、小児疑診例、非小児ベーチェット例。
結果:2010年1月において、11か国、17施設の計110名の患者(男性56名、女性54名)が登録された。初発症状の平均年齢は、8.1歳(中央値8.2歳)であり、発症からベーチェット病が疑われるまでの期間の平均は3.7年(範囲0−17年)であった。登録時に38%は再発性口腔内アフタだけを示していた。31%が2つの、また31%が3つまたはそれ以上の症状を呈していた。再発性口腔内アフタ以外に頻度の高い症状は、陰部潰瘍61%(67/110)、皮膚病変57%(63/110)、ブドウ膜炎33%(31/110)であり、陰部潰瘍は女性に、ブドウ膜炎は男性に有意に多く認められた。途中での除外例(4例)を除いた106例が評価の対象となった。
57例に1年目の評価が行われ、36例は新しい症状はなく、12例は1つの、9例は2つの新しい症状を有していた。専門家は、48例の記録を調査し、30例を確診例、8例を疑診例とした。26例は国際基準を満たし、確診例と分類され、17例は国際基準を満たさず、疑診例と診断された。
結論:専門医委員会は、分類基準とは別にほとんど症状を呈さない場合でも大半をベーチェット病と診断していた。


解説(個人的な解釈です)
小児期でのベーチェット病の診断は、症状や所見が揃わなかったりで、大人以上に診断が困難となることが予想されます。主に大人に用いられている診断基準が当てはまるのか、小児期に発症するベーチェット病の経過はどのようであるか、を確認するための調査の第1報です。最終的には、診断基準ではなく、専門家の合議制でベーチェットか否かを判定するようにすると、国際基準では確診されない場合でも、ベーチェット病と診断された症例も多く存在したことが示されています。今後、2年後、4年後にも経過観察してさらに検討が行われる予定です。

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