急性汎ブドウ膜炎発作に対するインフリキシマブ単回投与と副腎皮質ステロイド治療の比較;4週間の比較試験

短報
急性汎ブドウ膜炎発作に対するインフリキシマブ単回投与と副腎皮質ステロイド治療の比較;4週間の比較試験
Nikos Markomichelakis, Evi Delicha, Stylianos Masselos, Kalliopi Fragiadaki,Phaedon Kaklamanis and Petros P. Sfikakis
Rheumatology Advance Access published November 21, 2010

要約
目的:ベーチェト病の急性汎ブドウ膜炎発作における、抗TNF阻害剤であるインフリキシマブの単回投与と副腎皮質ステロイドの投与を比較すること
方法:汎ブドウ膜炎に対する前向き、観察研究で、発作時の患者の治療は、単回のインフリキシマブ投与 (5mg/kg, 19眼)、高容量メチルプレドニゾロン静脈投与 (1g/日、 3日間, 8眼)、トリアムシノロン・アセトナイドの硝子体内注入(4 mg, 8眼)であった。それまでの維持療法は、引き続き30日間は変更しなかった。視力、 前房の細胞、硝子体の細胞、後極部炎症を、治療後1日目、7日目、14日目、29日目 (±1日)に評価した。
結果:副腎皮質ステロイドの静脈投与と硝子体内注入では有意差は認めなかったが、インフリキマブでは、ステロイドに比べ、総合的な眼球炎症スコアと眼底炎症スコアが有意に早く減少した (P = 0.01、P<0.0001)。評価時間と無関係に、インフリキシマブは副腎皮質ステロイドに比べて、網膜血管炎の改善 (P<0.003),、網膜炎の回復 (P = 0.008)、嚢胞様黄斑浮腫の回復 (P<0.007)に優れていた。さらに、インフリキシマブは副腎皮質ステロイドに比べて、嚢胞様黄斑浮腫の回復のより速い回復が観察された (P<0.03)。3つの治療法の視力への効果は、開始時から観察終了時を通じて同等であった。インフリキシマブとメチルプレドニゾロンの投与では副作用は認めなかったが、トリアムシノロンの硝子体内注入では、8眼中4眼で眼圧の上昇を招き、2眼で手術が必要となった。
結論:単回のインフリキシマブ投与は、たとえ補助治療としてであっても、ベーチェット病の急性汎ブドウ膜炎発作のコントロールには常に考慮されるべきである。

以下は個人的な解釈です。
急性眼発作に対するインフリキシマブの頓服的な使用法、”単回使用”の評価です。通常は継続的に投与されることが多いと思いますが、寛解が維持された場合、いつ中止して既存の治療に移行するのかが議論される一方で、こうした単回投与の効果に着目した報告といえます。一般的には、こうした断続的な投与法は、レミケードに対する抗体を作りやすく、次第に効果が減弱しやすかったり、アレルギー反応をきたしやすくなるといわれていて推奨されてはいません。中長期的な効果は評価対象ではありませんので不明ですし、対象症例数も少ないことから、個々の治療の副作用の頻度などもここからものをいうのは難しいでしょう。

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