消化管出血 

先日、消化管出血についてのご質問をいただきました。記事としても一度整理しておきたいと思い、あらためて記載します。

消化管出血の症状−吐血・下血(黒色便)・血便−
食道や胃、十二指腸は上部消化管としてまとめられることもあり、急激かつ出血量が多い場合には吐血となることもあります。

上部消化管からの出血では、胃酸の影響で黒い便(いわゆる黒色便、タール便です。これが正確には下血を意味します)になります。それより下の小腸や大腸では血液として出て、血便となります。ただ、出血量が少ない場合は、後者でも腸に長くとどまる間にやや黒ずんだ血液となることもあります。

小腸や大腸の右半分の出血では、まだ便は固まっていないので、血液を混じた便になります。便そのものは通常の色調で、排便のたびに少量の鮮血が便の周囲に付着するか、ペーパーに付着する、水洗の水に鮮血が滲んで広がる、といった場合は直腸など、肛門近くからの出血のことが多いです。見た目に色は鮮やかでも、出血量としては少ないので貧血になることも少ないです。

急激にまとまった量の消化管出血があると、血液は刺激となり腸の蠕動が強くなって、お腹がゴロゴロ鳴り、グルグル動くのを自覚することもあります。誰でも食後や排便の前後などにもゴロゴロはありますが、腹痛があったり、皮膚や眼、関節の症状が悪化しているときに、食事や排便とは無関係で持続するときは要注意です。

消化管出血の検査
中心となるのが血液検査と内視鏡検査です。血液検査では、ある程度出血が持続、反復するなど時間が経過すると貧血の程度から出血量も推定できますが、初回出血の直後では異常とならないこともあり注意が必要です。大量の出血が予想された場合には、同時に血液型や輸血用血液との適合性をみる検査も行われるかもしれません。
内視鏡検査は、診断と同時に治療が可能です。ただ、出血が激しい場合には、出血源が確認しにくい場合もあります。出血源がわかれば、クリップで血管を挟んだり、熱で焼いて止血したりすることができます。
小腸からの出血が疑われる場合には、現在ではカプセル内視鏡やバルーン内視鏡が行われます。特にカプセル内視鏡は、治療はできませんが、簡便で苦痛もないため、どこから血液が見えるかを確認にして出血部位を推定するために緊急で行うこともあります。ただ食後では食物に埋もれてしまうため検査ができません。
その他、造影CTや出血シンチグラムがおこなわれることもあります。いずれも出血が持続している時でないと診断することはできません。
出血が持続しているが、上記診断方法でも診断ができない場合には、血管造影が行われます。消化管を栄養する動脈から漏れ出す造影剤を見つけて、その血管の末梢にコイルをつめて止血します。診断と治療が連続してできる利点があります。これができない場合には、開腹手術を行うこともあります。こうした治療はすべての医療機関で標準に行えるわけではありません。施設にあった対応をしているのが現状です。

医療機関を受診する際に
消化管出血かなと思ったら、基本的には医療機関を受診して下さい。症状もなく少量便に血液がついた程度なら多くは急ぐ必要はありません。いつもとは違う、顔色が悪く、めまいや腹部症状をともなう出血を疑ったら、至急の受診が勧められます。受診時は内視鏡検査に備えて、嘔吐や吐気がなければ透明な水分摂取だけにして食事は控えましょう。ベーチェット病があること、最近の病気の活動性や内服薬、特にステロイドや消炎鎮痛剤、バイアスピリンやワーファリンなどの服薬状況を伝えることも大切です。

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