電子カルテ

私が医師になった頃、かれこれ4半世紀近く前になりますが、患者さんの記録はカルテといわれる紙の冊子で始まりました。第1ページには、患者氏名や病名を記載するページがあり、開いた2ページ目以後に日々の診察所見や治療内容などを記載することが決められています。
記述は英語が殆ど、正確に言うと英語と日本語の混じったもので、あまり見栄えの良いものではありません。
昔の医者のイメージは、やや高飛車で、高慢、自信家、とりつくところがないものと私も感じていました。カルテの字はわかりにくく、同じ専門の医師がみても読めないこともしばしばで、情報の共有になっていないということも少なくありません。ボスである教授の”達筆な”文字の癖を見抜いて、解読が得意な同僚もいました。
かつては病名の告知も一般的でなかったこともあって、患者さんにわからないように記載するためなどという、今にして思えば訳のわからない答えをしていた指導医もいました。
ここ数年近くは電子カルテの導入が進み、診察室にはPCとモニターやプリンターがあり、診療内容をPCに打ち込むことになりました。私のブラインド・タイピングは遅いので、患者さんとモニターを覗き込みながら日本語で入力してゆきます。時間はかかりますし、待っている患者さんのことを思うと気はあせります。入力ミスはときに大きな事故につながりますから、細心の注意も必要です。患者さんの顔を見る時間が少なくなったのは問題なのですが、否応なく情報の共有が図れます。がん、転移、進行などといった、かなり敏感にならざるを得ない言葉もあからさまに表示されます。使っている薬もモニターを見ながら、これはまだ残っているとか相談したり、患者さんの目も借りて確認したりすることもできます。
患者さんに隠すことは何もない、そう思っています。ただ、その伝え方にはいろいろな配慮が必要だと考えています。

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