ベーチェット病のゲノムワイド解析 IL23とIL10
ベーチェット病の疾患感受性遺伝子領域
以前から何回か採り上げているベーチェット病に関連した患者側の遺伝子変化ー一塩基多型について、世界から同時に二つの報告がなされました。一つは日本からで、ともにNature geneticsの2010年8月号に掲載されました。日本からの報告では患者612名を、アメリカ、イギリス、トルコなどの共同研究では患者1215名もの多数のデータが対応するほぼ同数の非患者と比較検討されています。
ゲノムワイドといわれるように、90万近い主要なヒト遺伝子をしらみつぶしに調べることが可能となった結果、病気がある人とない人など、対立する集団が明らかに区別できれば、以前に比べると驚くほど短時間かつ正確にSNPを調べることが可能となっています。その意味では、誰が早くベーチェット病のSNPを調べるかが鍵でした。対象ごとの違いを際立たせ、わずかな違いを検出しようとすればするほど、多数の参加者が必要となります。1枚が数万円というSNPの検査チップを1000名以上の対象に用意するのは最低でも数千万円の予算が必要となります。まれな疾患であり、ヒト遺伝子の研究では厳密な手順を踏むことが求められますので、多数の検体を集めるのにご苦労されたことと思います。しっかり吟味された論文として世界同着で日本からの研究が掲載されたことは素晴らしいことと思います。
２本の論文ともに、IL10、IL23R-IL12RB2 のSNPが疾患感受性との関連することを指摘しています。
１．Genome-wide association study identifies variants in the MHC class I, IL10, and IL23R-IL12RB2 regions associated with Behet's disease
Elaine F Remmers1, Fulya Cosan2, Yohei Kirino1, Michael J Ombrello1, Neslihan Abaci3, Colleen Satorius1, Julie M Le1, Barbara Yang4, Benjamin D Korman1, Aris Cakiris3, Oznur Aglar3, Zeliha Emrence3, Hulya Azakli3, Duran Ustek3, Ilknur Tugal-Tutkun5, Gulsen Akman-Demir6, Wei Chen7, Christopher I Amos7, Michael B Dizon4, Afet Akdag Kose8, Gulsevim Azizlerli8, Burak Erer2, Oliver J Brand9, Virginia G Kaklamani10, Phaedon Kaklamanis11, Eldad Ben-Chetrit12, Miles Stanford13, Farida Fortune14, Marwen Ghabra15, William E R Ollier16, Young-Hun Cho17, Dongsik Bang18, John O'Shea19, Graham R Wallace20, Massimo Gadina4, Daniel L Kastner1 & Ahmet Gül2,3
２．Genome-wide association studies identify IL23R-IL12RB2 and IL10 as Behet's disease susceptibility loci
Nobuhisa Mizuki1,13, Akira Meguro1,13, Masao Ota2, Shigeaki Ohno3, Tomoko Shiota1, Tatsukata Kawagoe1, Norihiko Ito1, Jiro Kera1, Eiichi Okada4, Keisuke Yatsu5, Yeong-Wook Song6, Eun-Bong Lee6, Nobuyoshi Kitaichi7, Kenichi Namba8, Yukihiro Horie8, Mitsuhiro Takeno9, Sunao Sugita10, Manabu Mochizuki10, Seiamak Bahram11,12, Yoshiaki Ishigatsubo9 & Hidetoshi Inoko5
IL-23のSNPについては、2010年4月のAnn Rheum Disに中国からも報告されています。
Ann Rheum Dis doi:10.1136/ard.2009.119420 IL-23R gene confers susceptibility to Behcet's disease in a Chinese Han population. Zhengxuan Jiang1, Peizeng Yang1, Shengping Hou1, Liping Du1, Lin Xie2, Hongyan Zhou3, Aize Kijlstra4
今回の日本からの研究報告の概要は以下のホームページで閲覧できます。
http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/100714.html
IL-23の各炎症性疾患との関連は多く指摘されてきました。新しい治療の開発に向けた今後の研究の推移を見守りたいと思います。
