子宮内でのコルヒチン曝露後の妊娠の転帰

内容および翻訳上の間違いを含め、一切責任はもてません。参考とされる場合は、どうぞ各自の判断と責任で行ってください。
Orna Diav-Citrin, et al. American Journal of Obsterics & Gynecology, 2010,02,063 Article in press

目的:コルヒチンの胎児への安全性を調査することである。
研究デザイン:1994年から2006年にイスラエルの二つの奇形情報サービスに照会のあった妊娠中のコルヒチンの曝露について、前向きに観察、比較コホートのデザインで研究した。
結果:全体で、238名のコルヒチンに曝露した妊娠(97%は第一妊娠3半期)と964名の催奇形性物質への曝露のない妊娠が経過観察された。治療の原因疾患としては、家族性地中海熱(87.3%)、ベーチェット病(7.5%)、その他(5.2%)であった。主要な先天異常の頻度は両群同様で、(10/220 (4.5%) vs 35/908 (3.9%)、p=0.648)であった。細胞遺伝学的な異常はコルヒチン群では認めなかった。コルヒチン群における分娩時の妊娠週数の中央値は、(39週 (38-40) vs 40 (38-41); p<0.001と早く、 早産の頻度は、32/214 (15.0%) vs 51/867 (5.9%);p<0.001と高く、出生体重の中央値は、3000 (2688-3300) vs 3300 (2900-3600)g; p<0.001と低かった。
結論:この研究は、コルヒチンは主要なヒト催奇形性物質ではなく、おそらくは細胞遺伝学的な作用はないと思われることを示唆している。

注:
研究の対象としては、ヨーロッパで多い家族性地中海熱の患者が大半で、ベーチェット病患者の頻度は少ないですが、コルヒチン服用と妊娠への影響を評価した報告です。アメリ産婦人科学会雑誌にオンラインで掲載されています。
コルヒチンはイヌサフランに含まれる物質で、植物の細胞分裂に影響を与えて倍数体にする作用があり、品種改良などに使われるため、染色体の異常など細胞遺伝学的異常が懸念されてきました。以前にもご紹介しましたが、早産や出生体重の低下などは報告されていますが、催奇形性については特に非服用者と差がないとする報告の方が多いようです。

この研究で対象となった妊婦さんのコルヒチンへの曝露時期は、妊娠第一三半期からが97%を占め、服薬量の中央値は1㎎、79.7%は妊娠中ずっと継続して服用していたようです。コルヒチン服用群では、喫煙者が多いことも背景に挙げられていました。主要な先天異常としては、脳性麻痺2例、心室中隔欠損症、先天性甲状腺機能低下症、尿路逆流、内反足(片側、両側各1例)、高度の小頭症、臍帯ヘルニア、 頭蓋縫合早期癒合症が各1例と記載されています。一方、コルヒチン服用のない比較対照群では、2例のトリソミーを含む、3例の細胞遺伝学的な異常を認めたが、コルヒチン群では認めなかった。
コルヒチン群および対照群の異常率は、一般人口において予測されるベースラインの異常率と同程度で、これまでの報告と同様、コルヒチンが臨床的に推奨される量で使われる限りは、主要な催奇形性物質ではないことが確認されたと考察しています。

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