血管ベーチェット病患者における血管内動脈瘤治療の有効性と安全性

J Endovasc Ther. 2009 Oct;16(5):631-6.
Effectiveness and safety of endovascular aneurysm treatment in patients with vasculo-Behcet disease.
Kim WH, Choi D, Kim JS, Ko YG, Jang Y, Shim WH.
Division of Cardiology, Yonsei Cardiovascular Hospital, Yonsei University College of Medicine, Seoul, Republic of Korea.

目的:血管ベーチェット病患者の動脈瘤の血管内治療と外科治療の長期転帰を比較すること。
方法:1995年5月から2007年1月までのベーチェット病患者912名の医療記録を振り返って調査した。このうちの34名(3.7%)の非頭部動脈瘤39病変が血管ベーチェット病と診断された。1998年2月から2006年11月までの16名の血管ベーチェット病患者(男性14名、平均年齢39.2+/-9.2歳、25-63歳)が血管内治療(ステントあるいはコイル塞栓術)において20の動脈瘤が治療された。 全患者で緩解に向けて血管内治療前に免疫抑制療法(プレドニン60㎎/日)を受けた。1993年2月から2007年1月まで7名8か所の動脈瘤 (すべて男性平均年齢33.0+/-7.9歳、25-51歳)が平均31.5+/-23.2ヶ月にわたって外科的な人工血管留置術を受けた。
結果:血管内治療は全例で成功した。平均経過観察期間は47.6+/-41.8ヶ月で、この間3名(3/16, 18.8%)の患者に4回の偶発症が起こった(ステントの閉塞2、仮性動脈瘤への交通2)。死亡例はなかった。24ヶ月目での累積初期開存率は89%であった。人工血管置換術を行った7名8病変では、3回(42.9%)の偶発症があり、2回は仮性動脈瘤の再発、1名は動脈瘤に関連した死亡であった。
結論:ベーチェット病においては、破裂の危険性が高いことから、動脈瘤の治療は可能な限り行われる。動脈瘤の血管内治療は効果的で安全で、許容可能な血管合併症の頻度と治療部位の優れた開存性を示した。

注:ベーチェット病は頻度が少ないこともあって、まとまった患者数の報告は少ないです。数が少ない場合には、医者の方針や技量などによって結果が左右される傾向があります。この報告にあるようにベーチェット病912名の臨床記録を利用できるYonsei大学からはしばしばベーチェット病に関する報告がなされています。日本には特定疾患制度がありますので、単に給付にとどまらずこの登録を充実してゆけば貴重な資料になると思います。個人情報の問題もありますので慎重になる必要もありますが、頻度の低い疾患ではシステマティックな取り組みがなければ、現状を変えることは難しいように考えます。
この報告では、近年注目を集めている血管内治療のベーチェット病における有効性と安全性を示したものです。ベーチェットの場合、どこまでの血管が障害を受け、どこまで大丈夫なのかが分かりにくく、何度も治療を繰り返すことが難しい動脈瘤では、侵襲が少なく、追加治療の選択もある血管内治療は有力な選択の一つです。しかし病変の場所などによって、制限もありますので個別の判断が必要だと思います。施設間の経験や姿勢の違いも大きい領域です。
血管ベーチェット病の外科的治療の報告はこちらにもあります。http://d.hatena.ne.jp/sakurasasuke/200906

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