ベーチェット病におけるコルヒチンvs偽薬:無作為、二重盲検、クロスオーバー試験

Fereydoun Davatchi, Bahar Sadeghi Abdollahi, Arash Tehrani Banihashemi, Farhad Shahram, Abdolhadi Nadji, Hormoz Shams and Cheyda Chams-Davatchi
Behcet’s Disease Unit, Rheumatology Research Center, Tehran University for Medical Sciences, Shariati Hospital, Kargar Avenue, 14114 Tehran, Iran
Received: 10 April 2009 Accepted: 10 June 2009 Published online: 14 July 2009, Rheumatology

目的:コルヒチンの効果を多数のベーチェット病患者に対する前向き試験を行い、偽薬と比較した。
方法:この無作為抽出、二重盲検、クロスオーバー試験において、連続する169名の主要臓器病変のない患者が選択された。患者はベーチェット病国際診断基準を満たした。対象患者は、無作為にコルヒチン群または偽薬群に割り当てた。4ヶ月後にそれぞれ偽薬とコルヒチンを入れ替えてさらに4ヶ月投与した。第一の評価目標は総合的な疾患活動性指数(IBDDAM)である。第二の評価項目は個人の症状への反応である。t検定を各群における結果の評価に用い、コルヒチンと偽薬の間の違いのチェックにはANOVA分析を用いた。解析には登録‐治療法を用いた。
結果:偽薬についてはIBDDAMは3.17 to 3.63 (t = 1.750, P = 0.08)へと悪化した。コルヒチンについてはIBDDAM は3.35 to 2.75 (t = 4.143, P < 0.0001)に有意に改善した。口腔内アフタ、陰部潰瘍、毛嚢炎(原文ではpseudofolliculitis)、結節性紅斑はコルヒチンで有意に改善したが偽薬では改善したなかった。ANOVA解析によれば、IBDDAMはコルヒチンと偽薬の間に大きな有意差を認めた(F=14.674, P = 0.00016). 男女間での違いに有意差は認めなかった(F = 0.181, P = 0.67)。
結論:コルヒチンには、偽薬にはない、総合的疾患活動性指数の有意な改善が認められた。また、コルヒチンと偽薬の間にも統計学的な有意差が認められた。

注:ベーチェット病の基本薬として用いられるコルヒチンですが、必ずしも明確な有効性を示すデータがそろっているわけではありません。数少ない参考となるデータですが、イランから169名の連続する患者(医者が恣意的に選んでいるわけではないということです)を対象に検討したものです。クロスオーバー試験といって、最初に偽薬を投与された患者では、次はコルヒチンを、その逆もありで、それぞれの薬を投与しているときの状態を比較検討した最近流行りの臨床研究スタイルをとっています。最近、ベーチェットの臨床研究や治験ではイランからの活動が目立ちます。
コルヒチンの投与は、疾患活動性指数や症状を有意に改善したことが示され、コルヒチンの有効性が示されました。炎症スコアを20%程度低下させおり、私たちの臨床症状の改善の実感と近いのかもしれません。早くより病因の本質に近い治療薬ができて欲しいものです。


以前ご紹介したコルヒチンの二重盲検試験の結果を報告したトルコからの論文では、女性の皮膚粘膜病変と関節炎、男性の関節炎に有効と示されていましたが、今回のデータでは、より有効の範囲が広く示されています。http://d.hatena.ne.jp/sakurasasuke/20081101#1225553212

尚、コルヒチンの併用注意薬(マクロライド抗菌薬とスタチン)についてはかつて示した以下の報告があります。
http://d.hatena.ne.jp/sakurasasuke/20081122#1227355612

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