難治性全身性血管炎に対する自己非骨髄破壊性造血幹細胞移植

Ann Rheum Dis. 2008 Jul;67(7):991-7. Statkute L, Oyama Y, Barr WG, Sufit R, Ho S, Verda L, Loh Y, Yaung K, Quigley K, Burt RK. Division of Immunotherapy, Department of Medicine, Northwestern University Feinberg School of Medicine, 750 N Lake Shore Drive, Suite 649, Chicago, Illinois 60611, USA.

目的:既存の治療に対して不応性の全身性血管炎に対して、より積極的な寛解導入や再発予防のための新しい治療戦略が求められている。難治性血管炎患者治療として自己非骨髄破壊性造血幹細胞移植を行った4名の患者について、当一施設の経験を報告する。
方法:4名の難治性全身性血管炎患者(神経ベーチェット2名、神経血管シェーグレン症候群1名、ウェゲナー肉芽腫症1名)が、倫理委員会とFDAが認可した大量化学療法と自己造血幹細胞移植からなる第I相臨床試験に登録された。 末梢血幹細胞はサイクロフォスファマイドと顆粒球ーコロニー刺激因子によって動員された。移植前処置として、サイクロフォスファマイド200mg/kgとウサギ抗胸腺細胞グロブリン5.5 mg/kgを経静脈的に投与した。
結果:すべての患者が移植に関連した死亡や何ら有意な毒性を示すことなく、造血幹細胞移植に耐容性を示した。経過観察の中央値28か月(22-36か月)において、すべての患者は生存した。3名の患者(ベーチェットの1名を除く)は6-24ヶ月で、それぞれ持続性の寛解に入った。これらの患者では疾患の活動性、疾患や治療に関連した障害を示すバーミンガム血管炎活動性スコアや血管炎障害指数はそれぞれ有意に低下した。寛解の得られた3名の患者では、移植時に免疫抑制治療は中止し、以後必要ではなかった。ベーチェット病の1名はHLA-B51が陽性で造血幹細胞移植後に改善を認めなかった。結論:非骨髄破壊性造血幹細胞移植は従来の免疫抑制療法に抵抗性の全身性血管炎患者の一部には変わり得る治療となることが示された。

注:難治性血管炎の根治療法の一つの方向性は骨髄移植ですが、提供者の確保や副作用など、まだ解決されなければならない問題が残っています。骨髄移植より負担の軽い治療として、自身の造血幹細胞を移植する方法が模索されていますが、基本的に自身とは異なる骨髄を移植するのとは異なり、有効性を含めて不明な点も少なからず残されています。この試験は第I相臨床試験の段階で、本治療法の位置づけが明らかになるにはまだ多くの段階を経る必要があります。


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