ベーチェット病と妊娠

論文1 Behcet's disease and pregnancy relationship study.
Br J Rheumatol. 1997 Feb;36(2):234-8. Links Rheumatology (Oxford). 2000 Feb;39(2):222-4.
Marsal S, Falgá C, Simeon CP, Vilardell M, Bosch JA.
Internal Medicine Service, Hospital General i Universitari Vall d' Hebron, Barcelona, Spain.

論文要旨:妊娠のベーチェット病への影響と、あるいはベーチェット病の妊娠への影響は不明で、ほとんど報告されていない。我々は以下の3つのグループの女性を調査した。(1)グループA 23名の女性患者における61回の妊娠、内訳 25回の妊娠は10名のすでに診断のついた患者にみられ(group 1A)、13名の診断前の患者における36回の妊娠(group 2A); (2)グループB 再発性の口腔内潰瘍を有する30名の患者における83回の妊娠、(3)グループC 健常者20名の61回の妊娠。ベーチェット病の妊娠と胎児に対する影響と妊娠のベーチェット病に対する影響を調査した。質問票を用い、各妊娠、分娩、産褥に関する特別な情報を集積した。
各群間に有意な妊娠合併症の頻度の違いは認めなかった。周産期死亡の頻度は同様で、先天異常や新生児ベーチェット病は認めなかった。2名の患者のみに再燃が見られ、2名が妊娠中にベーチェット病と診断された。検討した患者では、ベーチェット病患者における妊娠の結果は、一般的に良好で、疾患の増悪もなく、胎児の経過も極めて良好であった。グループAの一人に産褥期にバッドキアリ症候群をきたした症例を初めて報告した。

論文2 Behcet's disease and pregnancy.
Acta Obstet Gynecol Scand. 2005 Oct;84(10):939-44.
Jadaon J, Shushan A, Ezra Y, Sela HY, Ozcan C, Rojansky N.
Department of Obstetrics and Gynecology, Hadassah Hebrew University Medical Center, Ein-kerem, Jerusalem, Israel.
論文要旨:
背景:ベーチェット病は多系統の慢性炎症性疾患で、口腔内、陰部潰瘍、虹彩炎の再燃を特徴とする。成因は不明のままであるが、おそらくは自己免疫機序による血管炎の変化がすべての障害臓器に共通しており、妊娠に不利に働くであろう血栓性の合併症がしばしば認められる。現在に至るまで本疾患と妊娠の相互の関係はほとんど知られていない。我々は、ベーチェット病と妊娠の相互の影響を、特に母体と胎児の合併症について明らかにした。
方法:この患者と健常対照者研究において、当施設で過去25年に治療したベーチェット病に罹患した女性の妊娠について評価した。すべての記録を再評価し、データは電話インタビューを行い、条件の合った対照者と比較検討した。 結果:31名のベーチェット病患者の135回の妊娠について研究した。妊娠中および出産後の病気の寛解は有意に高頻度であり、増悪は1/6のみに認められた(P < 0.001)。 妊娠中合併症(P < 0.001)、帝王切開(P < 0.001)、流産(P < 0.02)の頻度は、健康者に比し、より高率であった。
結論:われわれの研究から、妊娠はベーチェット病の経過に有害な影響を与えず、経過を改善させる可能性がある。しかしながら、ベーチェット病は、妊娠に対して悪影響を与えるようである。流産率は健常者より高く、妊娠合併症および帝王切開となる率は有意に上昇した。

コメント:ベーチェット病は比較的若い世代にも少なくありませんから、妊娠は大きな問題となります。どの論文にも書かれているように、ベーチェット病と妊娠の関係は明らかではありませんし、上の二つの報告に見られるように報告された結果も様々です。
ベーチェット病の基本には血管炎がありますので、可能性としてはさまざまな影響を起こしうるのでしょうが、頻度は際立って高いということはないようです。一般的には、なるべく胎児への影響の少ないお薬で、病状を安定させて妊娠することがよいのでしょうが、お薬、病状など主治医の先生と相談されて、準備されるのが大切と思います。


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