抗CD52抗体CAMPATH1Hによるリンパ球消失後のベーチェット病の緩解導入

Rheumatology (Oxford). 2003 Dec;42(12):1539-44.
Remission induction in Behcet's disease following lymphocyte depletion by the anti-CD52 antibody CAMPATH 1-H.
Lockwood CM, Hale G, Waldman H, Jayne DR.
Department of Medicine, School of Clinical Medicine, University of Cambridge, UK.

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目的:ベーチェット病は原因不明の多臓器血管炎で、さまざまな臨床症状を呈し、現在の治療はしばしば満足できるものではない。本疾患ではT細胞の自己反応性が明らかにされており、この研究ではヒト化抗CD52抗体CAMPATH1Hによるリンパ球消失への治療的効果を研究することである。
方法: 18名の活動性ベーチェット病患者に1回のみ 134 mg のCAMPATH-1Hを投与した。免疫抑制剤は漸減し、プレドニゾロンも臨床状況に応じて減量した。治療への反応性は、疾患活動性の臨床指標と血沈、CRPプレドニゾロン量、免疫抑制剤の必要量、疾患の再燃で評価した。
結果:6か月までに、 13/18 (72%) が寛解し、1日のプレドニゾロン投与量の平均値は17.7から6.7 mgに減少した(P < 0.005). 37ヵ月(6-60)の時点で、平均25ヶ月で7例が再燃し、5例は免疫抑制剤の導入が必要となり、2例はCAMPATH1Hによる再治療が行われた。10名は安定した寛解にあり、6名は治療を受けていない。中等度の注射に関連した有害事象が起こり、2例は甲状腺機能低下症が発症した。循環するCD4陽性T細胞は、CAMPATH-1H投与後に低値となり、少なくとも1年は低下が持続した。日和見感染は認めなかった。
結論: CAMPATH-1Hに対する治療反応は、ベーチェット病における自己反応性リンパ球が中心的な役割を果たしていることを示唆する。CAMPATH-1Hが従来の治療でコントロール不良なベーチェット病患者を治療不要な寛解に導入することができるかは、さらなる評価が必要である。

訳者注:2003年12月に発表された、Bリンパ球やTリンパ球に発現しているCD52に対するモノクロナール抗体を用いた治療の報告です。やや古い論文で、その後の進行状況が気になっていました。この論文から5年経過し、現在では主に移植後の免疫抑制あるいは慢性リンパ性白血病の治療薬アレムツズマブとして、多数の臨床研究が行われています。自己免疫疾患としては多発性硬化症での研究が先行しています。これらの報告では血球減少や感染症が最も多い副作用とされていますが、Bリンパ球(CD20)に対する抗体リツキシマブによるリンパ球消失治療とともに、今後の研究の進展に期待したいと思います。


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