ベーチェット症候群におけるアザチオプリンの比較試験

N Engl J Med. 1990 Feb 1;322(5):281-5.
A controlled trial of azathioprine in Behcet's syndrome.
Yazici H, Pazarli H, Barnes CG, Tüuumln Y, Ozyazgan Y, Silman A, Serdarolu S, Ouz V, Yurdakul S, Lovatt GE, et al.
Department of Rheumatology, Medical Faculty, University of Istanbul, Turkey.

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ベーチェット症候群、特に眼病変では細胞障害性の薬剤が長く使われてきた。しかしその有効性は明らかではない。我々はアザチオプリン(2.5kg/1日量・体重kg当たり)の2年間の二重盲検無作為プラセボ比較試験をトルコ人ベーチェット病男性を対象に、眼病変のない25名(グループ1)、眼病変を有する48名(グループ2)で評価した。
糖質コルチコイド(プレドニゾロンなど)は全例にそのまま継続したが、6名の重症な眼病変のために研究から除外された患者は、すべてプラセボ(偽薬)を投与されていた(P<0.001)。アザチオプリンは新しい眼病変の出現を予防する上で、プラセボより優れていた ( P<0.01)、グループ2では、開始時に眼病変を有していた14名は片眼のみであった(P<0.001)。グループ2のアザチオプリンを服用した群では、前房蓄膿を呈する症例は少なかった。( P<0.001) 。同様にアザチオプリンを服用していた患者では、口腔内潰瘍や陰部潰瘍、関節痛頻度も低かった。 アザチオプリンに起因する重篤な副作用は認めなかった。我々はアザチオプリンはベーチェット症候群の進行、特に重篤な症状である眼病変のコントロールに有効であると結論する。

訳者注:掲載されたNew England Journal of Medicineという雑誌は、臨床系の医学雑誌の中で最も権威の高いとされる雑誌の一つです。以前にも紹介したイスタンブール大学のYazici教授の論文です。19年も前で、患者数も決して多いものではありませんが、二重盲検、偽薬比較試験であることから、ベーチェット病におけるアザチオプリン(日本の商品名ではイムラン、アザニン)の有効性の根拠としてしばしば引用されています。アザチオプリンは免疫抑制剤であり、体内で代謝を受けメルカプトプリンとなり、DNA合成を抑制し、効果を発揮します。欧米では、この薬は体重1㎏あたりアザチオプリン2.5mgということが多いようですが、薬の代謝には個人差・民族差もあり、日本では1日50−100mgで使用することが多いようです。肝障害と骨髄抑制(白血球の減少など)が高頻度で、血液検査を指標に増減します。また、頻度は高いものではありませんが、リンパ腫の発生や易感染性についても注意が必要とされています。


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