ベーチェット病におけるコルヒチンの二重盲検法を用いた臨床評価

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Arthritis Rheum. 2001 Nov;44(11):2686-92.
A double-blind trial of colchicine in Behcet's syndrome.Yurdakul S, Mat C, Tüzün Y, Ozyazgan Y, Hamuryudan V, Uysal O, Senocak M, Yazici H.
Behcet's Syndrome Research Center, University of Istanbul, Turkey.

目的:コルヒチンは以前の6か月間の比較試験では、結節性紅斑と関節痛のみに有効性が示されているだけであったが、ベーチェット症候群に対して広く用いられている。多数患者を対象に、2年間の検討を行うことで、ベーチェット症候群におけるコルヒチンの効果を再評価した。
方法:116名のベーチェット症候群の患者平均27歳、(男性60名、女性56名)で、活動性のある皮膚粘膜病変を有し、眼や主要臓器に病変のない患者を、無作為に偽薬か、コルヒチン(体重に応じて1−2mg/日)の2群に割り当て、患者にも、医師にもどの薬が使われているか分からない(二重盲検法)方法で、2年間の評価を行った。第一の評価は、治療中のすべての病変の消失(完全寛解)が得られるかであり、第二の評価は両群における粘膜皮膚病変と関節病変の数の違いである。
結果:84名(72%、男性45名、女性39名)の患者が2年間の研究を終了した。第一の評価はKaplan-Meier分析を用いると、女性患者において、陰部潰瘍(P = 0.001)や結節性紅斑(P = 0.002)、罹患関節(P = 0.014)の発生を有意にコルヒチン治療群で減少させた、男性ではコルヒチン群では関節炎(P = 0.026)の発生を有意に減少した。第二の評価では、コルヒチン服用群では、女性においては陰部潰瘍数、結節性紅斑数、罹患関節数が、男性においては罹患関節数が有意に少なかった。食慾低下、吐き気、腹痛、下痢などの有害事象は両群で同様であった。追加治療が必要となったのは、コルヒチン群では、男性のみに短期間の非ステロイド消炎鎮痛剤が関節炎に対して3名必要となった。偽薬群では、陰部潰瘍に対してステロイドパルス療法とその後4週にわたりサリドマイドが必要になった女性患者が1名、男性患者では、短期間の非ステロイド消炎鎮痛剤と局所的なステロイド投与が関節炎に対して各々3名必要となり、局所的な筋炎と頭蓋内圧亢進に対してステロイドの投与が必要であった患者がそれぞれ1名いた。
結論: コルヒチンはベ-チェット症候群のいくつかの症状の治療に有用で、特に女性において有用である。これは、女性患者においては重症度が低いことを反映しているのかもしれない。

訳者注:やや古い論文ですが、ベーチェット病にしばしば使われるコルヒチンの有効性に関する二重盲検試験の報告ですので、一度は紹介しておこうと取り上げました。ベーチェット病の大御所、トルコ・イスタンブールのYazici教授のグループからの報告です。観察期間は2年間で、眼や臓器疾患を有する患者は除外されています。その意味では比較的軽症な患者が多いといえるかもしれませんが、一方で、比較的若年患者さんが多く、この点では活動性が高いともいえるかもしれません。結果的には、女性の皮膚粘膜病変(陰部潰瘍、結節性紅斑)と関節炎には有効でしたが、男性では関節炎のみに有効性が認められています。言い換えると、女性では口内炎、毛嚢炎に、男性では関節炎以外には有意な効果が認められなかったことになります。実数でみると、男性の陰部潰瘍や結節性紅斑数はコルヒチン群で減少しておりますが、有意な基準には達しませんでした。あくまでもこの患者さん数でのことであり、患者数が増えれば有意となる可能性もあります。一方で、口内炎、毛嚢炎といったベーチェット病では最もありふれた症状は、コルヒチンだけで完全に発生を止めることは困難な場合が多いことが分かります。
ベーチェット病とも共通点が報告されている自己炎症性疾患の一つである家族性地中海熱(Familial Mediterranean Fever)では、コルヒチンは第一選択薬とされており、この疾患の合併症であるアミロイドーシスの予防に有効であることが知られています。ベーチェット病では、基本薬として、他の薬のベースに用いられることが多く、肝機能障害、下痢が代表的な副作用です。効果にも、副作用にも個人差があると考えられます。



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