難治性ベーチェット病に対してアナキンラが有効であった1例報告

Costantino Botsios, MD, PhD; Paolo Sfriso, MD, PhD; Antonio Furlan, MD; Leonardo Punzi, MD, PhD; and Charles A. Dinarello, MD

Annals of Internal Medicine,19 August 2008 | Volume 149 Issue 4 | Pages 284-286より

要約
63歳でベーチェット病を発症した75歳女性が発熱、口腔、陰部潰瘍、針反応陽性で、治療のため紹介となった。国際的ベーチェット病診断基準に合致した。炎症反応は強く、HLA B51陰性であった。プレドニゾロン50mg/日、シクロスポリン 5mg/体重kg当たり、の使用で部分的に改善した。3年後腎障害のためシクロスポリンを中止し、アザチオプリン150mg/日を加えたが症状改善なく、69歳で大腸穿孔をきたし手術となった。アザチオプリンとプレドニゾロン10mg/日は継続したが、3年後に再燃。アザチオプリンは中止し、インフリキシマブ(5mg/kg,6週間隔)とメソトレキサート10mg/週を開始したが、症状の部分的な改善を認めたのみだった。2年間治療を続けたが、腹部の膿瘍のため中止。アザチオプリン、プレドニゾロン、コルヒチンを併用したが好中球増多を伴った発熱、口腔、陰部潰瘍、関節痛は遷延した。
著者らの施設を受診後、アザチオプリン、コルヒチンを中止し、プレドニゾロン5mg/日に加えて、アナキンラ(100mg/日)の皮下注射を連日投与を開始した。7日から10日以内に症状は劇的に改善した。アナキンラの投与を隔日投与としたところ、口腔内潰瘍と発熱が再出現したが、連日投与に戻すことで改善した。以後20か月、アナキンラ連日投与とプレドニゾロン5mg/日でdisease-freeの状態にある。
この症例でアナキンラが著効したことは、ベーチェット病がインターロイキン1に密接に関連した自己炎症性疾患であることを示唆している。家族性地中海熱やTNF受容体関連周期性症候群など、ベーチェット病と合併することがあることが報告されている疾患はアナキンラにも反応する。IL-1活性を低下させることが認められているアナキンラがほぼ完全緩解をもたらしたことから、IL-1βはベーチェット病の炎症反応の初期反応物質であることを示唆している。アナキンラの半減期は6時間未満であり、これは投与間隔を空けた際の再燃の説明となる。

訳者注
ほぼ毎週ベーチェット病に関する文献検索をしています。欧米で頻度が少ない疾患ですから、世界的に見ても報告は多くはありません。今回は難治性ベーチェット病に対するアナキンラ、インターロイキン1受容体拮抗剤の報告です。患者の皆さんは御承知の通り、この疾患は重症度に個人差もありますし、時期的にも緩解・増悪を繰り返すことが特徴です。この1例で、アナキンラに多くの期待をするのは避けたいと思います。関節リウマチの治療として海外では認可されていますが、リウマチでの有効性はインフリキシマブなどに平均的には及ばないとも言われ、易感染性の副作用もあります。ただ、有効性が確認されているインフリキシマブ(レミケード)、エンブレルに続いて、報告が近いアクテムラ、さらに新しい選択の可能性が出てきたことは注目に値します。ベーチェットなどの自己炎症性疾患には、TNF阻害剤とインターロイキン拮抗剤とどちらがより効果があるのかなど、今後さらに長期・多数例での研究が待たれます。



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