自己炎症症候群CAPSに対する長時間作動型インターロイキン1拮抗剤リロナセプトの有効性

Hoffman HM, Throne ML, Amar NJ, Sebai M, Kivitz AJ, Kavanaugh A, Weinstein SP, Belomestnov P, Yancopoulos GD, Stahl N, Mellis SJ.
Division of Rheumatology and Allergy/Immunology, University of California at San Diego, La Jolla, CA 92093-0635, USA.

Arthritis Rheum. 2008 Aug;58(8):2443-52


要約
自己炎症症候群CAPSに対する長時間作動型インターロイキン1拮抗剤リロナセプトの有効性を評価した。
症状を有し、原因となるNLRP3遺伝子変異を伴う成人47名のCAPS患者を対象にリロナセプト160mg/日の週1回皮下注射と偽薬の投与を6週間行った。44名が治療を終了し、症状改善率は、リロナセプト群の84%に対して偽薬は13%であった(P<0.001)。リロナセプト群は血液検査上の炎症反応(CRP,SAA)、他覚所見、医師による総合評価においても有意に改善した。また、9週間のリロナセプト投与後、リロナセプトと偽薬投与による9週間の維持療法の効果を検討すると、リロナセプト群が有意に優れていた。最も頻度の高い副作用は、注射局所の皮膚反応であった。
リロナセプトの週1回投与は、症状の著明かつ持続する改善とアミロイドーシスの危険のある血清アミロイド蛋白を正常化した。リロナセプトは全般的に好ましい安全性と耐用性を示した。

訳者注
自己炎症性疾患は、最近注目される疾患概念で、ベーチェット病もこの類縁疾患と考えられています。今後、疾患の解明が進み、定義などが確立すると、ベーチェット病の位置づけも明らかにされてくるでしょう。自己炎症性疾患にあっては、寒冷や細菌・ウイルスの感染などを契機に、カスパーゼ1を介してインターロイキン1が産生され、細胞膜表面に存在するIL-1の受容体には、細胞の内面にToll型受容体があり、ミエロイド分化因子88を介して、IL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)を活性化させ、さらに下流のTNF受容体関連因子6(TRAF6)を介して、MAPキナーゼやNFκBなどを刺激し、炎症が惹起されることが分かっています。このためインターロイキン1の抑制は治療のターゲットとなっており、アナキンラ(連日投与)とともに、作用時間がより長いリロナセプト(週1回投与)の研究が行われ、上記雑誌の8月号に2施設から別々に報告されました。私の知る限り、リロナセプトとして、ある程度の症例数をまとめた最初の論文です。まだ、限られたデータで、長期的な感染症などの副作用や安全性についても慎重な評価が求められます。今後の展開に期待しましょう。



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