ベーチェット病に伴う亜急性縦走性脊髄炎

Subacute longitudinal myelitis associated with Bechet's disease
Inter Med 49:343-7,2010

神経ベーチェット病は、ベーチェット病の5-49%に見られるとの報告があるが、脳幹と大脳基底核が好発部位であり、脊髄炎は稀な臨床像である。
今回我々は全身の硬直と歩行の不安定性を訴えた患者を経験した。
患者は食欲不振と体重減少を訴え、2ヶ月後に歩行困難と上肢の筋力低下を訴えた。入院6か月前より再発性の口内炎を自覚していた。入院後の検査で両側のぶどう膜炎が認められた。脳神経および高次機能は異常がなく、四肢の軽度の痙性まひがあり、歩行には介助が必要であった。神経学的には、四肢の腱反射は亢進し、ホフマン、バビンスキーといった病的反射は両側に認められたが、知覚や自律神経には異常を認めなかった。
血液検査では、軽度の汎血球減少を認めたのみで他は正常であった。ヘルペス、HTLV1などのウイルスおよび自己抗体は陰性であった、HLAではB51が陽性、脳脊髄液検査では細胞数39/μL、グルコース56㎎/dL、蛋白144㎎/dLであった。IgG indexは0.66、オリゴクローナルバンドは認めず、細菌培養、結核菌DNAも検出されなかった。MRIでは、脳には異常はなく、脊髄は全体にわたってT2強調画像で高信号を呈していた。
ベーチェット病による神経病変と診断し、ステロイドパルス療法(1g/日、3日間)に引き続いて、プレドニソロン60㎎/日を投与した。症状は2週間以内に著明に改善し、プレドニソロンを週に10㎎減量し、30㎎となった段階で退院した。以後も20㎎/日で維持しているが、神経病変を含めたすべての症状は再発を認めていない。

注)ほぼ脊髄全体に炎症が認められた神経ベーチェットの報告です。神経病変の場所としては、脊髄や末梢神経は稀です。ただ報告としては、びまん性脊髄炎や縦走性脊髄炎などとして、脊髄の広い範囲、あるいは多発して炎症を示す所見がみられた症例が小数報告されています。
原因としては、脊髄を還流する血管炎が推定されています。多くは大量ステロイドには良く反応しますが、一部は反応せずインターフェロン免疫抑制剤が使用されています。

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