妊娠中における消化器疾患のスペクトラム(男性の服薬と妊娠に関する抜粋)

The Spectrum of Gastrointestinal Disorders During Pregnancy
From Nature Clinical Practice Gastroenterology & Hepatology,2008 Aug;5(8):430-43.
Jutta Keller, MD; Dorothea Frederking, MD; Peter Layer, MD

本情報を参考にされる際には、必ずカテゴリー「医学情報を解釈する上での注意点」をお読みの上、最終的な判断は自身の責任において行ってください。

父となる人の炎症性腸疾患の医学的治療
児を希望する炎症性腸疾患を有する男性の医学的治療は、胚や胎児が潜在的に毒性のある物質に直接曝露されるわけではないので、一般的に女性に対する治療より複雑ではない。しかしながら、受胎の4か月以内に父となる人に投与された場合には、いくつかの薬剤は男性の妊孕性を低下させ、同時に、或いは催奇形性を有する。この期間は、精子形成と精子の保存の期間(120日まで)を反映している。

スルファサラジン(サラゾピリンなど)は精子数や運動性、形態の異常の結果として不妊と明確に関連するとされてきた。さらに父親のスルファサラジンの服用と出生児の先天性奇形との関連性が報告されている。したがって、挙児を希望する男性は少なくとも受胎を試みる4ヶ月前にスルファサラジンを中止するか、メサラミン(ぺンタサ)へ変更するべきである。

メソトレキセートは男性において、回復可能な精子減少症をきたすことが示されているが、メソトレキセートを服用中の男性の妊娠における先天異常のデータの報告はない。ガイドラインでは受胎を試みる少なくとも4ヶ月前にメソトレキセートの服薬中止を推奨している。

アザチオプリンと6メルカプトプリンは動物実験において明らかに妊孕性を低下させる、しかし、これらの薬剤のヒト男性の妊孕性に対する影響はさらなる研究が必要である。 加えて、これらの薬剤を服用している男性の胎児に先天性奇形を起こす頻度を中等度増加させるかどうかについては、根拠が対立している。 したがって、アザチオプリンおよび6メルカプトプリンをパートナーが妊娠を希望する男性の治療に用いるかどうかは議論が残されたままである。これらお薬がすべて使われるべきか、それとも受胎前の良い時期に中止することを試みることができるかは、患者と相談の上、決定する必要があり、患者の臨床的な状況に注意する必要がある。

抗TNF抗体を用いた治療は、精子の運動の減少と形態学的異常と関連するとされている。これらの所見が男性の妊孕性の低下と言い換え得るか否かについては正式に研究されてはいない。 現在のところ、それゆえ、父親となることを考えている男性に対して、一般的に抗TNF抗体を用いた治療を中止することを一般的には勧められていない。

注:先の炎症性腸疾患における治療に関する論文の男性についての記述
対象疾患は、ベーチェットとは異なりますが、一般的な有害事象については参考になります。薬の有害事象だけでなく、受胎から出産まで疾患の影響を受ける母体と違って、ベーチェットそのものの影響は少ないと考えられます。


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