コルヒチンの併用注意:マクロライド系抗生物質とスタチン系高脂血症薬

以下は、薬の副作用を強調して、服用を禁止することを意図したものではありません。服用は、あくまでも効果と副作用のバランスの中で考える必要があります。

ベーチェット病でしばしば処方されるコルヒチンですが、他の薬を服用する際に注意を要することがあります。もちろん、すべての併用者に必ず問題が起きるわけではありませんが、高齢者や腎機能障害のある患者さんでは注意が必要です。
ジェネリック医薬品の使用が推進されていますが、薬によっては20以上もの商品名があり、他院で処方されている薬の把握の点ではいつも悩まされます。コストの点ばかりが強調されますが、安全のための識別の方法も改善が必要です。院外処方を利用される方も多いと思いますが、複数の医療機関で処方を受ける方はかかりつけの薬剤師さんをつくり、すべて確認してもらうと良いでしょう。

注意を要する薬剤

1.マクロライド系抗生物質

併用時に特に注意を要する状態:腎機能障害、人工透析中など
最もよく知られているのは、マクロライド系といわれる種類の抗生物質であるクラリスロマイシン(商品名クラリス、クラリシッドなどの他ジェネリック多数)、エリスロマイシン(用品名エリスロシンなどの他ジェネリック多数)、です。胃潰瘍や・十二指腸潰瘍の原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌の治療や耳鼻科・呼吸器領域の感染症の治療に使われることがあります。コルヒチンにこれらの薬が併用された場合、発熱、黄疸、下痢、血小板減少などをきたし、人工透析が行われていた患者では死亡例がみられていますので注意が必要です。この薬については、コルヒチンの添付文書にも「併用注意」と明記されています(禁忌とはされていません)。

1.Rollot F, Pajot O, Chauvelot-Moachon L, Nazal EM, Kelaidi C, Blanche P. Acute colchicine intoxication during clarithromycin administration. Ann Pharmacother 2004 Dec;38(12):2074-7.

2.Dogukan A, Oymak FS, Taskapan H, Guven M, Tokgoz B, Utas C. Acute fatal colchicine intoxication in a patient on continuous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD). Possible role of clarithromycin administration. Clin Nephrol 2001 Feb;55(2):181-2.

3.Caraco Y, Putterman C, Rahamimov R, Ben-Chetrit E. Acute colchicine intoxication--possible role of erythromycin administration. J Rheumatol 1992 Mar;19(3):494-6.

4.Tateishi T, Soucek P, Caraco Y, Guengerich FP, Wood AJ. Colchicine biotransformation by human liver microsomes. Identification of CYP3A4 as the major isoform responsible for colchicine demethylation. Biochem Pharmacol 1997 Jan 10;53(1):111-6.


2.スタチン系高脂血症

シンバスタチン(商品名リポバス)、アトルバスタチン(商品名リピトール)、プラバスタチン(商品名メバロチンなどジェネリック多数)などのHMG-CoA 還元酵素阻害剤といわれる高脂血症に用いられる薬では、コルヒチンがこれらの薬剤の分解酵素を阻害・競合して、血中濃度を上昇させ、重篤な横紋筋融解症をきたしたとする報告があります。スタチン系薬剤ではもともと横紋筋融解症は有名な副作用ですが、コルヒチンはこの頻度をさらに上げる可能性が指摘されています。特に高齢者や腎機能障害がある場合には注意が必要です。この薬の併用については、海外では上記マクロライドよりは一段低い注意にとどまっており、日本ではコルヒチンの添付文書には記載がありません。


1.Justiniano M, Dold S, Espinoza LR. Rapid onset of muscle weakness (rhabdomyolysis) associated with the combined use of simvastatin and colchicine. J Clin Rheumatol 2007 Oct;13(5):266-8.

2.Tufan A, Dede DS, Cavus S, Altintas ND, Iskit AB, Topeli A. Rhabdomyolysis in a patient treated with colchicine and atorvastatin. Ann Pharmacother 2006 Jul-Aug;40(7-8):1466-9.

3.Alayli G, Cengiz K, Canturk F, Durmus D, Akyol Y, Menekse EB. Acute myopathy in a patient with concomitant use of pravastatin and colchicine. Ann Pharmacother 2005 Jul-Aug;39(7-8):1358-61.

4.Hsu WC, Chen WH, Chang MT, Chiu HC. Colchicine-induced acute myopathy in a patient with concomitant use of simvastatin. Clin Neuropharmacol 2002 Sep-Oct;25(5):266-8.


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