ベーチェット症候群にけるアザチオプリンの研究:長期予後への効果

Arthritis Rheum. 1997 Apr;40(4):769-74.Links
Azathioprine in Behcet's syndrome: effects on long-term prognosis.
Hamuryudan V, Ozyazgan Y, Hizli N, Mat C, Yurdakul S, Tumln Y, Senocak M, Yazici H.
University of Istanbul, Turkey.

本情報を参考にされる際には、必ずカテゴリー「医学情報を解釈する上での注意点」をお読みください。


目的:ベーチェット症候群におけるアザチオプリンの長期的予後への効果を評価すること。
方法:1984年から1987年にかけてアザチオプリンを用いた 二重盲検、プラセボ比較試験に参加した患者73例(全例男性)の内の57例に対し、平均94か月標準偏差+−10か月遡って再評価した。残りの16例の内5例が死亡しており、11例は経過不明であった。
結果:失明(log rank chi2 = 5.6, P = 0.02)および視力を10段階に分けたスケールで2段階の右目の視力低下(log rank chi2 = 5.9, P = 0.015)は、試験終了後の治療に関わらず、有意にアザチオプリン群よりも元々偽薬に割りつけられた群に多かった。 眼外合併症の発生は、プラセボ群では9例、アザチオプリン群は2例で、プラセボ群でより高頻度である傾向が認められた。
アザチオプリンの有益な効果は、研究に組み入れられるまでの期間が短い眼病変を有する患者で特に明らかであった。初回の比較試験後にプラセボ群の4例が、アザチオプリン群の1例が死亡した。
結論:アザチオプリンによる早期からの治療はベーチェット症候群の長期予後に好ましい影響を与える。

訳者注:先に紹介した論文の続編にあたるものです。先の研究で対象とした患者さんを、一定期間経てから調べ直し、試験期間中にアザチオプリンを投与した群と偽薬群での違いを検討しています。先の研究では、医師も患者さんがどちらの薬を服用しているかわからない状況でしたが、この試験では既に判明している状況で過去へ遡って調べる研究となっています。実際、最初の2年間の試験終了後は、症状に合わせて、アザチオプリンを始めたり、シクロスポリンを追加したりしていますので、以後の期間の治療効果は、必ずしもアザチオプリンだけの効果とは言えません。正確には、「最初の2年間でアザチオプリンを服薬した群の方が眼病変が抑制された」ことを示しています。有効性は眼症状が出現してから2年以内にアザチオプリン治療に組み入れられた群に顕著で、2年以上経過してからでは統計学的な差は見られていません。これらを根拠に、筆者らは活動性の高い、若年、男性患者では、より早期から免疫抑制剤を使用すすることの有効性を示唆しています。

本研究は厳密さという点では先の論文に劣りますし、様々な治療法が行われる現在にそのままあてはめることはできません。

ベーチェット病では炎症発作を繰り返しますが、時に特殊型では一回の発作が重大な結果につながったり、炎症発作の積み重ねで永続的な機能低下に至ることがあります。この両者が最も懸念される病態です。その意味では、活動性の高い場合は、早期からの使用は理にかなっているとも言えますが、一方で、長期使用の薬の副作用を考慮することが必要です。アザチオプリンによる悪性リンパ腫などのリスクは、より使われる頻度の高い潰瘍性大腸炎寛解維持療法においては、かなり低いとされています。
眼病変では、免疫抑制剤としてシクロスポンなども使用され、さらにインフリキシマブも認可された状況ですので、病状、活動性によって治療法の選択肢は拡がってきています。


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