腸型ベーチェットに対するレミケードの緩解導入と維持における有効性

Inflamm Bowel Dis. 2008 Sep;14(9):1259-64より
Naganuma M, Sakuraba A, Hisamatsu T, Ochiai H, Hasegawa H, Ogata H, Iwao Y, Hibi T.
Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University, Tokyo

6例の激症腸型ベーチェット患者をインフリキシマブ(レミケード)で治療した。全例ステロイド依存性で、免疫抑制剤に対して難治性であり、3例は6メルカプトプリンに、アザチオプリン、シクロスポリン、メソトレキセートの各薬剤に1例づつが抵抗性であった。
4例がインフリキシマブにより寛解が得られ、この全例が定期的なインフリキシマブの投与で最大3年までの寛解が維持された。他の2例は回腸潰瘍に対して外科手術が必要となった、このうち1例は手術後2年間は定期的なインフリキシマブ投与により、寛解が維持されている。
無作為比較試験が必要ではあるが、インフリキマブは劇症型腸型ベーチェットの緩解導入と維持療法の一つのオプションとなると思われる。

訳者注
慶応大学の日比教授のグループからの報告です。これまでも小数例の腸型ベーチェットに対するインフリキシマブの有効性は報告されていました。6例と比較的少ない報告ですが、腸型ベーチェットの中でも重症度の高い症例が集められているものと思われます。6例中2例は手術が必要となりましたが、定期的なインフリキシマブの投与により、6例中5例で寛解が維持されています。
腸型ベーチェットの潰瘍は繰り返しやすく、特に手術後は吻合部近くでの再発が必発に近いことが知られています。潰瘍の程度も、腸にできた口内炎程度の浅く、治癒傾向の高いものから、広い範囲で循環障害が疑われるような、深く、大きなものまであります。この報告は、後者に属する、他の治療でコントロールが難しい劇症型のものに対して、寛解への導入・維持にインフリキシマブが有効であることを示しています。頻度の高い非重症型のものとは区別して考える必要があります。

科学的には無作為抽出試験が大切ですが、特に劇症型では「(穿孔・出血に)待ったなし」の状況ですから、患者としては、他の治療法に難治性の場合にレミケードが使えることは大きな安心につながります。クローン病で注目されている様に、一定期間使うことで粘膜の治癒(mucosal healing)が得られた場合、長期的に再発を防げるのか、その後レミケードを中止することができるのか、興味がもたれます。本邦でも、こうした報告を積み上げてゆくことが、レミケードの適応拡大につながっていくと考えます。今後さらに長期での報告が期待されます。



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